
開店の1時間前、「今日ムリです、すみません」のトークが来ます。返事を打って、代わりに入れる人を探して、なんとか開店する。閉店後には、誰が休んで誰が代わりに入ったか、店長の記憶にしか残っていません。
その記憶が要るのは、月末です。給与を計算するとき、日払いを清算するとき、次の当日欠勤で誰に頼むか決めるとき。そして、その人が辞めたときに理由を振り返るときです。この記事では、当日欠勤と遅刻を口頭とトークで済ませたときに何が起きるかと、残す項目、穴の埋め方を整理します。
口頭とトークで済ませた欠勤は、月末に消えている
複数店舗を運営するグループでコンカフェの店長をしていた人に、給与計算の手順を聞きました。システムは使っていましたが、伝票との照合、入力漏れ、日払い、ペナルティのような調整は手作業で確認していたそうです。在籍の全員分を月末にまとめて確認するため、最終チェックまで含めるとかなり時間がかかったと話していました。
このとき効くのが、当日欠勤と遅刻の記録です。月末に「あの日は誰が休んだか」をトークの履歴から探すと、探す時間がかかるうえに、口頭で聞いた分は残っていません。給与計算で違いが出るのは、たいてい記録が残っていない日です。
もうひとつ消えるのが、辞めた理由の手がかりです。辞めた人が「就職が決まったので」と言って辞めたとき、その前の1か月で当日欠勤が増えていたなら、店の中に別の理由があった可能性を残せます。記録がないと、そこは見えません。
記録する5項目
残す項目は5つで足ります。多くすると続きません。
- 日付
- 連絡が来た時刻と手段(トーク・電話・口頭・連絡なし)
- 本人が言った理由(そのままの言葉で。店の解釈を混ぜない)
- 店がどう埋めたか(誰に頼んだか、頼めなかったか、人数を減らして回したか)
- 給与への反映(欠勤控除・日払いの扱い・ペナルティの有無)
遅刻も同じ5項目で、「時刻」の欄に予定の時刻と実際に来た時刻を書きます。
置き場所は、紙でもスプレッドシートでも構いません。大事なのは、連絡を受けた人がその場で書けることです。店長が閉店後にまとめて書く運用は、忙しい日ほど抜けます。連絡を受けた内勤がその場で1行書ける場所にしてください。
「本人が言った理由」をそのまま書くのは、あとで店の中の理由と外の理由を分けるためです。キャストが辞めた理由に「内勤」が挙がる店で起きていることで書いたように、辞めた理由の筆頭に店の中の問題が来ることがあります。欠勤の理由も、そのまま残しておくと同じ分け方ができます。
「罰金」を決める前に知っておくこと
当日欠勤が続くと、ペナルティを決めたくなります。決める前に、2つ知っておいてほしいことがあります。
ひとつは、雇用契約で働いてもらっている人については、減給の制裁に上限があることです。
就業規則で、労働者に対して減給の制裁を定める場合においては、その減給は、一回の額が平均賃金の一日分の半額を超え、総額が一賃金支払期における賃金の総額の十分の一を超えてはならない。
労働基準法 第91条
もうひとつは、ペナルティが辞める理由になることです。取材した店で挙がった離職理由の筆頭は「内勤の問題」でした。罰金の運用が人によって違う、その日の機嫌で決まる、といった状態は、本人にとっては内勤の問題として見えます。
ペナルティを決めるなら、額よりも先に「何分からを遅刻とするか」「連絡なしと連絡ありを分けるか」「誰が判断するか」を決めて、全員に同じ基準で当てはめてください。基準が書いてあれば、記録の欄はそれを書き写すだけになります。
この記事の法令にあたる部分は、雇用契約で働いてもらっている人(労働者)に当てはまる話です。キャストを業務委託で扱っている店では、ペナルティの扱いも記録の義務も、契約の形そのものが論点になります。自分の店がどちらにあたるかは、この記事では判断できません。社会保険労務士か税理士、または労働基準監督署へ確認してください。
出勤の記録は、店の義務でもある
雇っている人の出勤時刻と退勤時刻を記録することは、店の側の義務です。厚生労働省のガイドラインは、使用者が労働者の始業・終業時刻を確認し記録すること、その方法は使用者が自ら確認するか、タイムカードなどの客観的な記録を基礎とすることを原則としています。
自己申告に頼る場合は、実態と合っているかを確認する措置が求められます。「入りました」のトークを出勤の記録にしている店は、この自己申告にあたります。トークの時刻が実際の出勤時刻とずれていないかを、店の側で確認できる形にしておいてください。
記録の保存期間も決まっています。
使用者は、労働者名簿、賃金台帳及び雇入れ、解雇、災害補償、賃金その他労働関係に関する重要な書類を五年間保存しなければならない。
労働基準法 第109条
附則第143条により、当分の間はこの「五年間」を「三年間」と読み替えます。ガイドラインは、出勤簿やタイムカードなど労働時間の記録に関する書類もこの保存の対象としています。誰が店で働いているかを名簿で把握する話は、体入も従業者名簿が必要で扱っています。
当日の穴は、休みの人にも声をかけて埋める
当日欠勤が出たとき、たいていの店は出勤予定の人に「今日、延長できる?」と頼みます。それで回る日もありますが、続くと同じ人に負担が集まります。そして、その人が次に辞めます。
埋め方を先に決めておくと、当日の判断が軽くなります。
- その日に休みを出している人にも、「今日入れる人はいますか」と声をかける
- 頼む相手を、直近で代わりに入ってくれた人の記録を見て分散する
- 埋まらなかったら、人数を減らして回す判断を誰がするかを決めておく
- 埋まった場合も埋まらなかった場合も、記録の「店がどう埋めたか」に残す
休みの人に声をかけるのをためらう店が多いのですが、休みを出した人が全員その日に予定があるわけではありません。声をかけなければ、入れたかもしれない人には何も届きません。
確定したシフトを店の都合で動かすときの決め方は、シフトを集める・催促する・配る手順の「確定した後の変更」に書きました。当日の穴埋めも、期間が始まった後の変更にあたります。
遅刻は「何分から」を決めて、全員に同じ基準で
遅刻は、欠勤より記録が抜けやすい項目です。10分遅れて来た人に、その場で何も言わずに済ませると、記録にも残りません。それが続くと、10分が20分になり、注意したときに「今まで何も言われなかった」と返されます。
決めるのは2つだけです。何分からを遅刻とするか。連絡があった場合と、なかった場合を分けるか。この2つが決まっていれば、記録の欄はそれを書き写すだけになります。
基準を全員に同じように当てはめることが、ペナルティの額より効きます。人によって扱いが違う店では、遅刻そのものより、扱いの違いが辞める理由になります。
月に1回、記録を並べて比率を見る
5項目の記録が1か月たまったら、月に1回だけ並べて見ます。見るのは3つです。
- 当日欠勤が、出勤予定の何回に1回起きているか
- 連絡なしの欠勤が、当日欠勤のうちどれくらいか
- 代わりに入った人が、特定の人に偏っていないか
取材した店では、名簿に載っている人のうち実際に動いているのは半分ほどでした。在籍の人数と、実際にシフトに入っている人数は別のものです。当日欠勤の比率が上がってきたら、募集を足す前に、実働の人数と欠勤の理由を先に見てください。募集の問題なのか、店の中の問題なのかが分かれます。
記録と穴埋めを、店長の記憶から外す
ここまでの記録は、紙とスプレッドシートで回せます。ただ、連絡を受けた人がその場で書く、休みの人にも声をかける、誰が代わりに入ったかを残す、という作業は、忙しい日ほど抜けます。
欠勤の連絡を受けたら休みの人を含めて代わりの募集を配り、手を挙げた人を店長が承認して確定し、その経緯が記録として残るところまでを自動でやるツールもあります。手作業のまま整えるか、自動化するかは店の回し方によります。いま困っていることをそのままLINEで送ってください。
今日できる確認
- 先月の当日欠勤を、日付と理由まで思い出せるか。思い出せないなら、記録が消えている
- 欠勤と遅刻の連絡を受けた人が、その場で書ける場所があるか
- 遅刻を「何分から」と決めているか。全員に同じ基準で当てはめているか
- ペナルティがある場合、雇っている人について労働基準法第91条の上限を確認したか
- 出勤・退勤の時刻を、店の側で確認できる形で記録し、保存しているか
- 当日欠勤が出たとき、休みの人にも声をかけているか
まず今週、欠勤と遅刻を1行ずつ残すところから始めてください。1か月たまれば、募集を足すべきか、店の中を直すべきかを判断する材料になります。
出典
- 労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン(厚生労働省・平成29年1月20日策定)
- 労働基準法(e-Gov法令検索。第91条が減給の制裁の制限、第109条が記録の保存、附則第143条が当分の間の読み替え)
- いわゆる「シフト制」により就業する労働者の適切な雇用管理を行うための留意事項(厚生労働省・PDF。確定したシフトの変更に関するルール)
- 確かめよう労働条件(厚生労働省。労働条件に関する総合情報サイト)
※2026年9月22日に上記資料を確認しました。自分の店の契約の形にどう当てはまるかは、社会保険労務士・税理士、または労働基準監督署へ確認してください。
この記事の要点
- 当日欠勤と遅刻の記録は、給与計算・代わりを頼む相手の判断・辞めた理由の振り返りの3か所で使う。口頭とトークだけでは月末に消えている
- 残す項目は5つ。日付、連絡が来た時刻と手段、本人の理由、店がどう埋めたか、給与への反映
- 雇っている人に罰金を決める前に、労働基準法第91条の減給の上限を知っておく。出勤の記録は同法第109条で保存義務がある


