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キャストが辞めた理由に「内勤」が挙がる店で、内勤に何が起きているか

キャストが辞めた理由を並べると、店の外の理由が多い中で、店の中にある理由がひとつだけ筆頭に来ていました。「内勤の問題」です。内勤が悪いという話ではありません。内勤の仕事の範囲が決まっておらず、育成に締め切りがなく、指示の出し方が人によって違う。その3つが重なった店で起きていることです。

編集部(水商売経営学)公開 2026年9月22日10分で読めます
宵の店のバックヤードで、先輩スタッフが新人にメモを見せながら手順を説明している手元

辞めた理由を4つ並べてもらいました。内勤の問題、彼氏、就職、大学。下の3つは店の外で起きたことで、店から手を打てません。筆頭のひとつだけが、店の中にありました。

複数店舗を運営するグループでコンカフェの店長をしていた人に聞いた話です。この店で「内勤の問題」の中身までは記録に残っていませんでした。指示の出し方なのか、当たりの強さなのか、キャストとの距離感なのか。分からないままだと、対策は勘になります。この記事では、内勤の側で何が起きているのかを、仕事の範囲・育成・指示の出し方の3つに分けて整理します。

内勤が悪いのではなく、内勤の仕事が決まっていない

「内勤の問題」と聞くと、その内勤個人の性格の話に聞こえます。実際に店で起きているのは、もう少し手前の話です。

内勤の仕事は、店によって範囲が違います。送迎、出勤の確認、卓の管理、ドリンクの運び、キャストへの指示、クレームの一次対応、応募への返信、シフトの集計。このうちどれが自分の仕事で、どれがそうでないかを、本人が言えない店が多い。範囲が決まっていないと、内勤は目の前で起きたことに全部反応することになります。反応の仕方は本人の性格と機嫌に左右され、それがキャストから見ると「当たりが強い」「人によって言うことが違う」になります。

つまり、内勤の問題の多くは、内勤の仕事を決めていない店の問題です。ここを直さずに内勤を入れ替えても、次の内勤で同じことが起きます。

店長の仕事を並べると、内勤の育成だけ締め切りがない

同じ店長に、担当していた仕事を挙げてもらいました。売上、キャスト管理、仕入れ、クレーム対応、面接、内勤の育成、シフト、ポスターや小物の発注、給料の作成。店舗運営のほぼ全部です。

このうち締め切りがあるのは、シフトと給料計算です。日付が来れば必ずやらなければならない。仕入れとクレーム対応にも締め切りがあります。今日中に片づけないと明日の営業が回らない。

内勤の育成には締め切りがありません。今日やらなくても、今日の営業は回ります。だから後ろに送られ、送られ続けます。この店長が「最も時間を取られた」と答えた仕事は、キャストのメンタルケアでした。人が辞めそうになってから使う時間です。前もって内勤に使えなかった時間が、あとから個別の対応として返ってきていると読めます。

内勤の仕事を、キャストに対して何をする人かで書き出す

まず、内勤の仕事を紙に書き出します。書き方にコツがあって、作業の一覧ではなく「キャストに対して何をする人か」で書きます。

  • 出勤の確認と、遅刻・欠勤の連絡を受けて記録する
  • 卓の状況を見て、キャストに次の動きを伝える
  • クレームが起きたとき、キャストを下げて店長に繋ぐ
  • 新人の初日に付いて、閉店まで一緒にいる
  • 応募への返信と、面接の日程を組む

書き出すと、内勤が「言ってはいけないこと」も自然に決まります。売上や指名の数でキャストを比べること、営業中に本人の私生活に立ち入ること、注意を全員の前ですること。これらは指示ではなく、次の項で扱う類型に入ります。

内勤の仕事が紙にあると、新人の内勤に何を教えるかも決まります。教える内容が決まれば、育成に締め切りを付けられます。「最初の1か月でこの5つ」と書いておくだけで、育成は店長の仕事のいちばん下から上がってきます。

「当たりが強い」は、指針では6つに分かれている

キャストから「内勤の当たりが強い」と聞いたとき、店長はたいてい「あいつは口が悪いだけ」と受け止めます。厚生労働省の指針は、これをもう少し細かく分けています。

職場におけるパワーハラスメントは、職場において行われる①優越的な関係を背景とした言動であって、②業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより、③労働者の就業環境が害されるものであり、①から③までの要素を全て満たすもの

厚生労働省「事業主が職場における優越的な関係を背景とした言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針」(令和2年厚生労働省告示第5号)

指針は、代表的な言動を6つの類型に分けています。身体的な攻撃、精神的な攻撃、人間関係からの切り離し、過大な要求、過小な要求、個の侵害です。「当たりが強い」の中身は、この6つのどれかに当てはまることが多い。全員の前で怒鳴るのは精神的な攻撃、特定のキャストにだけ卓を回さないのは人間関係からの切り離し、私生活を営業中に聞き出すのは個の侵害にあたりえます。

指針は、客観的にみて業務上必要かつ相当な範囲で行われる適正な業務指示や指導は、これにあたらないとも書いています。内勤がキャストに指示を出すこと自体は、仕事です。問題になるのは、範囲を超えたときと、範囲が決まっていないときです。前の項で仕事を書き出すのは、この「範囲」を店として持つためでもあります。

労働施策総合推進法第30条の2は、事業主に対して、これらの言動によって労働者の就業環境が害されることのないよう、雇用管理上必要な措置を講じることを求めています。中小企業も2022年4月1日から義務の対象です。指針が挙げる措置は、方針を明確にして周知すること、相談の窓口を決めて対応すること、起きたときに迅速かつ適切に対応することです。

キャストの契約の形で、当てはまる範囲が変わります

この記事の法令にあたる部分は、雇用契約で働いてもらっている人(労働者)に当てはまる話です。キャストを業務委託で扱っている店では、契約の形そのものが論点になります。自分の店がどちらにあたるかは、この記事では判断できません。社会保険労務士か労働局へ確認してください。ただし、相談の窓口を置くことと、辞めた理由を記録することは、契約の形に関係なく今日からできます。

相談の窓口を、内勤以外にひとつ置く

指針の措置を小さな店に落とすと、やることはひとつです。キャストが内勤のことを相談できる相手を、内勤以外にひとり決めて、全員に伝える。

店長が窓口になる店が多いのですが、店長と内勤が近い店では、キャストは店長に言えません。オーナー、店長、エリアの担当のうち、内勤と直接の上下関係にない人にします。連絡の手段は、その人の直通のトークで足ります。

窓口があると、辞める前に話が来るようになります。取材した店で「内勤の問題」の中身が記録に残っていなかったのは、辞めるときに初めて理由を聞いたからです。辞める前に聞ける場所があれば、中身が残ります。

新人内勤に付く人を決めて、最初の1か月を紙にする

内勤の育成に締め切りを付ける方法は、新人のキャストに付く人を決めるのと同じです。新人の内勤が入った日に、誰が付くかを決めておきます。付く人は店長でなくて構いません。

最初の1か月で教える内容は、前の項で書き出した「キャストに対して何をする人か」の一覧をそのまま使います。1か月の終わりに、その一覧を上から一緒に見て、できているものに印を付けます。これで育成に締め切りが付きます。

もうひとつ、指示の出し方を揃えます。注意は個別に、営業中はその場で短く、閉店後に理由を説明する。この順番を内勤全員で同じにするだけで、「人によって言うことが違う」はかなり減ります。

辞めた人の理由を、店の中と外に分けて残す

取材した店でも、辞めた理由の中身は残っていませんでした。辞めた人が出たときに、次の5つをひとことずつ残します。

  • 日付と、在籍していた期間
  • 本人が言った理由
  • こちらから見えていた理由
  • 直前1か月で、シフトの入り方や当日欠勤が変わっていたか
  • 最後に内勤の誰と、何を話したか

本人が言う理由と、こちらから見えている理由は、そろわないことがあります。だから両方書きます。当日欠勤や遅刻を記録している店なら、直前1か月の変化はそこから読めます。記録の形は当日欠勤と遅刻を口頭で済ませると何が起きるかに書きました。

半年分たまれば、店の中の理由と外の理由の比率が出ます。比率が出て初めて、募集を増やすべきか、中を直すべきかを判断できます。誰が店で働いているかの把握そのものは、体入も従業者名簿が必要で扱っています。

応募対応とシフトを内勤から外すと、育成の時間が出る

内勤の育成に時間が取れない店で、内勤が何に時間を使っているかを見ると、応募への返信とシフトの集計であることが多い。取材した店長に自動化してほしかった仕事を聞いたときも、挙がったのはシフトと応募対応の2つでした。

この2つは、今日やらなくても今日の営業は回る仕事です。だから内勤の手が空いた時間に少しずつやることになり、営業中の集中を削ります。手作業のシフト集計を減らす手順はシフトを集める・催促する・配る手順にまとめました。出勤希望をLINEで集めて催促し、確定を配るところまでを自動でやるツールもあります。内勤の時間を育成に回したい店は、いま困っていることをそのままLINEで送ってください

今日できる確認

  • 内勤の仕事を、「キャストに対して何をする人か」で書き出したか
  • 内勤が言ってはいけないことを、指針の6類型に照らして決めているか
  • キャストが内勤のことを相談できる相手を、内勤以外にひとり決めて伝えているか
  • 新人の内勤に付く人と、最初の1か月で教える内容が決まっているか
  • 注意の出し方(個別に・その場で短く・閉店後に理由)を内勤全員で揃えているか
  • 直近半年で辞めた人の理由を、店の中と外に分けて残しているか

内勤を入れ替える前に、この6つを確認してください。決まっていないものが多いなら、次の内勤でも同じことが起きます。

出典

※2026年9月22日に上記資料を確認しました。自分の店の契約の形にどう当てはまるかは、社会保険労務士、または都道府県労働局へ確認してください。

この記事の要点

  • 取材した店で挙がった離職理由のうち、店から手を打てるのは「内勤の問題」だけだった。内勤の仕事の範囲・育成・指示の出し方の3つで起きている
  • 内勤の育成には締め切りがないので、店長の仕事のいちばん下に沈む。新人内勤に付く人と最初の1か月の内容を紙に書くだけで沈まなくなる
  • 「当たりが強い」は、厚生労働省の指針では6つの類型に分かれている。相談の窓口を内勤以外にひとつ置く
編集部(水商売経営学)

水商売経営学の編集部です。実際に店を回してきた人間と、業界の外から入った編集者で書いています。法律・税務の記事は公的資料を出典として明示します。制度の説明は出典を示して公開し、許可・届出の要否や条文の解釈など「うちの店の場合はどうか」に踏み込む記事は、行政書士・税理士の確認が取れるまで公開しません。取材した店の話は、聞いた範囲のことだけを書きます。個別の判断は店の状況によって変わるため、迷う表現は確認したうえで進めてください。

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