
日曜の夜、LINEのグループに「来週いける日です」が3件。個別トークに2件。金曜の営業中に口頭で聞いたのが1件。月曜の朝、店長はそれを手帳に写して、まだ出していない人を数えます。
シフトの手作業がつらいのは、この写す作業だと思われがちです。実際には、写す前の「集める」と、写した後の「催促する」「確定を配る」で時間が消えています。無料のシフト表テンプレートを配っていますが、テンプレートが解決するのは書く作業だけです。この記事では、残りの3つを手作業で回すときの手順と、先に決めておくルールを整理します。
シフトの手作業は3つに分かれる
店長の仕事のうち、シフトは締め切りのある数少ない仕事です。日付が来れば必ず作らなければならない。だから後回しにはならないのに、毎週同じところで時間を取られます。
分けて見ると、作業は3つです。
- 集める。出勤希望を全員から受け取る
- 催促する。締切までに出していない人に声をかける
- 確定を配る。決まったシフトを全員に届け、変更の連絡を受ける
「書く」はこの3つの間に挟まっている小さな作業で、表を埋めるだけなら30分もかかりません。時間が消えているのは、集まらない希望を待つ時間と、出していない人を探す時間、確定後に来る「やっぱり休みたい」への対応です。
複数店舗を運営するグループでコンカフェの店長をしていた人に、自動化してほしかった仕事を聞くと、挙がったのはシフトと応募対応でした。どちらも、今日やらなくても今日の営業は回る仕事です。そして遅れた分の損が、週末に埋まらないシフトとして返ってきます。
集める:提出先を1か所に、締切を曜日で固定する
集める作業で決めることは3つだけです。
まず提出先を1か所にします。グループでも個別トークでも構いませんが、両方にしないことが大事です。口頭で聞いた分は、聞いた店長がその場で提出先に書き込みます。「あとで書いておく」が消える原因です。
次に締切を曜日と時刻で固定します。「毎週水曜の22時まで」のように、営業中に思い出せる時刻にします。締切が動く店では、キャストの側も「まだ大丈夫」と判断できず、結局最後に出す人が増えます。
最後に、出し方の形式を決めます。出勤か休みか、出勤なら何時から何時までか。この2つが揃っていれば足ります。「たぶん」「行けたら」は受け取らず、出勤か休みかに寄せてもらいます。曖昧な希望は確定の段階で必ず問い直すことになり、そこで時間が消えます。
雇用契約で働いてもらっている人については、シフトの決め方そのものにも厚生労働省の留意事項があります。使用者が一方的に決めるのは望ましくなく、作成前に希望を聞くこと、確定したシフトを知らせる期限と方法を、あらかじめ話し合って決めておくことが挙げられています。
シフト表などの作成に当たり、事前に労働者の意見を聴取すること 確定したシフト表などを労働者に通知する期限や方法
厚生労働省「いわゆる『シフト制』により就業する労働者の適切な雇用管理を行うための留意事項」(令和4年1月7日・令和8年6月19日改正)
催促する:出していない人の一覧が、催促の9割
催促がつらいのは、声をかける作業そのものではありません。誰に声をかければいいかを、そのたびに数え直しているからです。
締切の前日と当日の2回、出していない人だけに個別で送ります。全体に「まだの人は出してください」と送っても、出していない本人は自分のことだと思いません。個別に送るためには、出した人と出していない人の一覧が要ります。提出先を1か所にしていれば、この一覧は提出先を上から見るだけで作れます。
一覧を作ると、もうひとつ分かることがあります。毎回同じ人が最後になる、という事実です。ここで責める必要はありません。締切を知らないのか、忘れるのか、決められない事情があるのかで、対応が変わります。掛け持ちで働いている人は、他店のシフトが決まらないと出せないことがあります。その場合は、その人だけ締切を1日遅らせるほうが、全体の締切を動かすより安く済みます。
確定を配る:全体表と個人宛の両方を出す
確定したシフトは、全体表と個人宛の両方で配ります。全体表だけだと、自分の日を探すのが面倒で見ない人が出ます。個人宛だけだと、誰と一緒の日かが分からず、当日に「今日ひとりですか」という連絡が来ます。
配った時刻は残しておきます。「見ていない」「聞いていない」で揉めたとき、配った記録があるかどうかで話が変わります。
確定したあとに来る変更は、次の項で扱います。ここでは、変更の窓口も提出先と同じ1か所にしておくことだけ決めてください。確定後の変更が口頭とトークに分かれると、表と実態がずれたまま週末を迎えます。
確定した後の変更は、期限と手続きを先に決める
「やっぱり火曜は休みたい」「金曜、もう1人入れる?」。確定したあとの変更は、店からもキャストからも来ます。
雇用契約で働いてもらっている人の場合、確定したシフトの労働日や労働時間を変えることは、労働条件の変更にあたります。労働契約法第8条は、労働条件の変更は労働者と使用者の合意によるとしています。厚生労働省の留意事項は、この条文を踏まえて、確定後の変更は双方が合意したうえで行うようにし、そのためのルールを先に決めておくことを挙げています。
シフトの期間開始前に、確定したシフト表などにおける労働日、労働時間等の変更を使用者又は労働者が申し出る場合の期限や手続 シフトの期間開始後に、使用者又は労働者の都合で、確定したシフト表などにおける労働日、労働時間等を変更する場合の期限や手続
厚生労働省「いわゆる『シフト制』により就業する労働者の適切な雇用管理を行うための留意事項」
店として決めておくのは、次の3つで足ります。
- 期間が始まる前の変更は、いつまでに、どこに申し出るか
- 期間が始まった後の変更は、誰が承認するか
- 店の都合で減らすときは、本人に先に伝えて合意をとる
当日の欠勤と遅刻は、この変更ルールとは別に記録の形を決めておく必要があります。手順は当日欠勤と遅刻を口頭で済ませると何が起きるかにまとめました。
「シフトによる」とだけ書いた通知書では足りない
雇っている人に渡す労働条件通知書に、始業と終業の時刻を「シフトによる」とだけ書いている店があります。厚生労働省の留意事項は、これでは足りないとしています。
労働条件通知書等には、単に「シフトによる」と記載するのでは足りず、労働日ごとの始業及び終業時刻を明記するか、原則的な始業及び終業時刻を記載した上で労働契約の締結と同時に定める一定期間分のシフト表等をあわせて労働者に交付するなどの対応が必要です。
厚生労働省「いわゆる『シフト制』により就業する労働者の適切な雇用管理を行うための留意事項」
労働基準法第15条は、契約を結ぶときに賃金や労働時間などの労働条件を明示することを使用者に求めています。休日についても、曜日が決まっていないなら、休日の決め方の考え方を示す必要があります。同法第35条は、毎週少なくとも1回か、4週間を通じて4日以上の休日を与えることを定めています。
この記事の法令にあたる部分は、雇用契約で働いてもらっている人(労働者)に当てはまる話です。キャストを業務委託で扱っている店では、契約の形そのものが論点になります。自分の店がどちらにあたるかは、この記事では判断できません。社会保険労務士か税理士、または労働基準監督署へ確認してください。
体入で来た人も含めて、誰が店で働いているかを店が把握しているかどうかは、名簿の話につながります。体入も従業者名簿が必要で扱っています。
手作業で限界が来るのは、人数ではなく変更の回数
手作業のシフト管理は、在籍が増えると限界が来ると思われがちです。実際に限界が来るのは、確定後の変更が増えたときです。人数が同じでも、掛け持ちの人が増えたり、当日の欠勤が続いたりすると、表と実態がずれる回数が増えます。ずれを直すたびに、全体表と個人宛の両方を作り直すことになります。
ここまでの手順は、紙とLINEだけで回せます。ただ、集める・催促する・確定を配るの3つを毎週繰り返す作業自体は、店長がやらなくてもいい作業です。出勤希望をLINEで集め、締切前に出していない人へ自動で催促し、確定を全体と個人の両方に配るところまでを自動でやるツールもあります。手で回すのがつらくなったら、いま困っていることをそのままLINEで送ってください。店の回し方に合わせて、手作業のまま整えるか、自動化するかを一緒に考えます。
内勤に任せている店では、内勤がこの3つに時間を取られて、キャストの受け入れや育成に手が回らなくなることがあります。そこで何が起きるかはキャストが辞めた理由に「内勤」が挙がる店で起きていることに書きました。
今日できる確認
- 出勤希望の提出先が1か所に決まっているか。口頭で聞いた分をその場で書き込んでいるか
- 締切が曜日と時刻で固定されているか。先週の締切を、キャストが答えられるか
- 先週、出していない人の一覧を作ったか。それとも数え直したか
- 確定を配った時刻が残っているか
- 確定後の変更を申し出る期限と、誰が承認するかを決めているか
- 雇っている人の通知書に、始業・終業の時刻を「シフトによる」とだけ書いていないか
どれも今週から変えられます。まず提出先と締切を決めて、来週の締切の翌日に、出していない人の一覧を作ってみてください。催促にかかる時間が、その一覧の有無で変わります。
出典
- いわゆる「シフト制」により就業する労働者の適切な雇用管理を行うための留意事項(厚生労働省・令和4年1月7日・令和8年6月19日改正・PDF)
- 労働契約法(e-Gov法令検索。第4条が労働契約の内容の理解促進、第8条が合意による労働条件の変更)
- 労働基準法(e-Gov法令検索。第15条が労働条件の明示、第35条が休日)
- 確かめよう労働条件(厚生労働省。労働条件に関する総合情報サイト)
※2026年9月22日に上記資料を確認しました。自分の店の契約の形にどう当てはまるかは、社会保険労務士・税理士、または労働基準監督署へ確認してください。
この記事の要点
- シフトの手作業は「集める・催促する・確定を配る」の3つに分かれる。つらいのは書く作業ではなく、この3つ
- 提出先を1か所に決め、締切を曜日で固定し、出していない人の一覧を作る。催促の手間はこの一覧でほぼ決まる
- 確定したシフトの変更は労働条件の変更にあたる。変更を申し出る期限と手続きを先に決めておく


