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キャストやスタッフの健康診断はいつ必要か。深夜営業の店は6か月ごと、アルバイトが対象になる基準

「うちはアルバイトばかりだから、健康診断は関係ない」「年に1回受けさせていれば足りる」。深夜に営業する店では、どちらも当てはまらないことがあります。午後10時から午前5時の間に働くことが常態になっている人は、6か月以内ごとに1回の健診の対象になりうるからです。この記事では、雇っている人の健康診断の決まりを、条文と労働局の資料で確認します。

編集部(水商売経営学)公開 2026年9月24日15分で読めます
開店前の控室のテーブルで、クリップボードの書類にペンで記入する手元。横に血圧計と水の入ったグラス

この記事の要点

  • 事業者は、常時使用する労働者に、雇入れ時と1年以内ごとに1回の健康診断を行う(労働安全衛生法第66条、規則第43条・第44条)。アルバイトでも、1年以上の雇用見込みがあり、週の労働時間が同種の業務をする通常の労働者の4分の3以上なら対象
  • 深夜業を含む業務に常時従事する人には、その業務への配置替えの際と6か月以内ごとに1回の健診が必要(規則第45条)。労働局の資料は、深夜業を1週1回以上または1か月に4回以上行う業務をこれにあたるとしている
  • 結果は健康診断個人票にして5年間保存し、本人に通知し、異常の所見がある人は医師の意見を聴く。健診の結果は要配慮個人情報にあたるので、見られる人と使い道を限る

夜の店は、アルバイトのキャストやスタッフで回っていることが多く、健康診断は「社員のいる会社の話」と思われがちです。けれども労働安全衛生法の健康診断は、雇用契約で働く人のうち一定の条件にあたる人なら、アルバイトでも対象になります。

もう一つ見落としやすいのが、深夜の働き方です。午後10時から午前5時の間に働くことが常態になっている人は、年1回ではなく6か月以内ごとに1回の健診の対象になりえます。この記事では、健診の種類と対象、費用、結果が出たあとの手順、健康情報の扱いを、条文と厚生労働省・労働局の資料で確認します。雇用契約で働く人(労働者)についての話です。

人を雇う店には、健康診断を受けさせる義務がある

労働安全衛生法第66条第1項は、事業者に、労働者に対する医師による健康診断を義務づけています。どの健診をいつ行うかは、労働安全衛生規則が決めています。

基本は、雇い入れるときの健診(規則第43条)と、1年以内ごとに1回の定期健診(規則第44条)です。どちらも「常時使用する労働者」が対象です。雇入れ時の健診は、雇い入れる直前か直後に行う必要があると、石川労働局の資料は説明しています。

受ける側にも決まりがあります。同じ条の第5項は、労働者は事業者が行う健診を受けなければならないと定めています。ただし、店が指定した医師のもとで受けたくない人は、ほかの医師から同じ内容の健診を受け、その結果を証明する書面を出せば足ります。医師を選ぶ余地は、本人に残されています。

雇入れ時の健診には、もう一つ例外があります。医師による健康診断を受けてから3か月を経過しない人を雇い入れ、その人が結果を証明する書面を出したときは、受けた項目に相当する項目を省けます(規則第43条ただし書)。前の職場で受けたばかりの人なら、その書面で足りる場合があります。

事業者が第66条第1項から第3項に違反したときは、50万円以下の罰金です(同法第120条第1号)。法人も、行為者とともに罰金の対象になります(同法第122条)。

アルバイトのキャストも健康診断の対象になる条件

「常時使用する労働者」には、正社員だけでなく、条件を満たすパートやアルバイトも入ります。条件は平成26年7月24日の通達(基発0724第2号)で示されていて、静岡労働局と大阪労働局の資料にその内容が載っています。

要件内容
① 雇用の期間期間の定めのない契約で働いている。期間の定めがある契約でも、1年以上使う予定がある、または更新して1年以上使っている(深夜業を含む業務などの特定業務従事者の健診では6か月以上)
② 労働時間1週間の労働時間が、同じ事業場で同種の業務をする通常の労働者の1週間の所定労働時間の4分の3以上

①と②の両方を満たす人が対象です。たとえば店の正社員の所定労働時間が週40時間なら、4分の3は週30時間です(仮定の計算です)。

4分の3に届かなくても、①を満たし、週の労働時間がおおむね2分の1以上の人には、健診を行うのが望ましいとされています(大阪労働局の資料)。週に2、3日だけ入るキャストが多い店でも、1人ずつ契約期間と週の時間を並べれば、対象の漏れを防げます。

契約期間と所定労働時間は、雇うときに書面で示す労働条件でもあります。書き方は雇用契約書や労働条件通知書に何を書くかにまとめました。社会保険にも週の労働時間による加入条件がありますが、根拠の法律が別なので、スタッフを雇ったら必要な保険の手続きで別に確認してください。

深夜のシフトに入る人は、6か月ごとの健診が必要になりうる

規則第45条は、特定の業務に常時従事する労働者に、年1回より短い間隔の健診を求めています。

事業者は、第十三条第一項第三号に掲げる業務に常時従事する労働者に対し、当該業務への配置替えの際及び六月以内ごとに一回、定期に、第四十四条第一項各号に掲げる項目について医師による健康診断を行わなければならない。この場合において、同項第四号の項目については、一年以内ごとに一回、定期に、行えば足りるものとする。

労働安全衛生規則 第45条第1項

ここで引かれている規則第13条第1項第3号には、暑い場所や有害物を扱う業務と並んで、「ヌ 深夜業を含む業務」が挙がっています。夜の店の仕事がこれにあたるかどうかが、年1回か6か月ごとかの分かれ目です。

どのくらい深夜に働けば「深夜業を含む業務」になるのかは、昭和23年の通達が目安を示しています。

「深夜業を含む業務」とは業務の常態として深夜業(22

〜翌5
)を1週1回以上又は1か月に4回以上行う業務をいいます。(S23.10.1基発第1456号)

大阪労働局「健康診断等を実施しましょう」

営業が午後10時を過ぎる店で、そのシフトに週1回以上入る人は、この目安にあたりえます。対象になる人には、その業務への配置替えの際と、その後6か月以内ごとに1回、定期健診と同じ項目の健診を行います。胸部エックス線検査だけは1年以内ごとに1回で足ります。

深夜に働く人には、自分で受けた健康診断の結果を店に出せる仕組みもあります(労働安全衛生法第66条の2)。対象は、常時使用され、健診を受けた日の前6か月間を平均して1か月あたり4回以上深夜業に従事した人です(規則第50条の2)。

出せるのは、定期健診の項目の全部か一部について受けた健診の結果です。受けた日から3か月を過ぎたものは出せません(規則第50条の3)。

店が結果を受け取り、異常の所見があった場合は、提出の日から2か月以内に医師の意見を聴き、健康診断個人票に書きます(規則第51条の2第2項)。本人が体調を気にして自分で受けた健診でも、出されたら店の手順に乗ります。

深夜の割増賃金も、同じ午後10時から午前5時の時間帯で決まります。計算の仕方は深夜手当はいくら払うのかにまとめました。自分の店のシフトが目安にあたるかは、勤務の実態を持って労働基準監督署に確認してください。

雇入れ時と定期の健診で調べる項目

健診の種類と時期を、表にまとめます。

健診対象時期根拠
雇入れ時の健診常時使用する労働者雇い入れるとき規則第43条
定期健診常時使用する労働者(特定業務従事者を除く)1年以内ごとに1回規則第44条
特定業務従事者の健診深夜業を含む業務などに常時従事する労働者配置替えの際と6か月以内ごとに1回規則第45条

雇入れ時の健診は11項目です。既往歴と業務歴の調査、自覚症状と他覚症状の検査、身長・体重・腹囲・視力・聴力、胸部エックス線、血圧、貧血検査、肝機能検査、血中脂質検査、血糖検査、尿検査、心電図検査です(規則第43条)。定期健診では、これに喀痰検査が加わります(規則第44条第1項)。

定期健診の一部の項目は、医師が必要でないと認めるときは省略できます(同条第2項)。厚生労働省のリーフレットは、省略の基準は年齢などで機械的に決まるものではなく、医師が総合的に判断するものだと注意しています。

2027年4月1日からは、項目が変わります。令和8年厚生労働省令第89号による改正で、雇入れ時と定期の健診に血清クレアチニン検査が加わり、定期健診の項目から喀痰検査が外れます。来年度の健診を予約するときは、どの項目で受けるのかを健診機関に確認してください。

健診の費用は店が負担し、受診時間の賃金は話し合いで決める

健診の費用について、石川労働局の資料は、雇入れ時・定期・特定業務従事者の健診のすべてを事業者負担で行うよう求めています。埼玉県の労働相談の説明も、健診の実施は事業主の義務なので、費用は当然事業主が負担するとしています。

受診にかかった時間の賃金は、扱いが違います。昭和47年の旧労働省の行政解釈(基発第602号)は、一般の健診は業務の遂行と関連して行うものではないので、その時間の賃金は当然に事業者が負担すべきものではなく、労使で協議して定めるものだとしています。そのうえで、労働者の健康の確保は事業の円滑な運営に欠かせないとして、事業者が払うことが望ましいとしています。

再検査や精密検査の費用は、法令で決まっていません。石川労働局の資料は、労使の協議や就業規則などで決める事項だとしています。受診時間の賃金も再検査の費用も、あとで揉めないように先にルールにしておくと扱いがぶれません。店で決めるルールの置き場所は、就業規則と36協定は何人から必要かで確認できます。

健康診断の結果が出たあとに店がやる手順

健診は受けさせて終わりではありません。結果が出たあとの手順も、法律と規則で決まっています。

やること内容根拠
記録と保存健康診断個人票を作り、5年間保存する法第66条の3、規則第51条
本人への通知受けた人に、遅滞なく結果を通知する法第66条の6、規則第51条の4
医師の意見を聴く異常の所見がある人について、健診の日から3か月以内に聴き、個人票に書く法第66条の4、規則第51条の2第1項
就業上の措置医師の意見を勘案し、必要なら労働時間の短縮、深夜業の回数の減少などを行う法第66条の5第1項
保健指導特に健康の保持に努める必要がある人に、医師か保健師による保健指導を行うよう努める法第66条の7第1項
労働基準監督署への報告常時50人以上の労働者を使う事業者は、定期の健診(規則第44条・第45条)の結果を遅滞なく報告する規則第52条第1項

記録(第66条の3)と通知(第66条の6)を怠れば、第120条第1号の50万円以下の罰金の対象です。

お酒を飲む接客が仕事に含まれる店では、肝機能の数値などに所見が出た人の働き方を、店長の感覚で変えたくなる場面があるかもしれません。法律の順番は、医師の意見を聴き、その意見を勘案して本人の実情を考えながら措置を決める、というものです。 深夜業の回数を減らすことも、この措置の例として条文に書かれています。

産業医がいない小さな店でも、相談先はあります。労働者数50人未満の事業場は、労働者健康安全機構の地域窓口(地域産業保健センター)で、健康診断の結果にもとづく健康管理について、医師や保健師の相談や個別訪問での助言を原則無料で受けられます。

健診の結果は要配慮個人情報。店内での共有と保管に注意する

健康診断の結果は、個人情報保護法の「要配慮個人情報」にあたります。法第2条第3項が病歴などを挙げ、施行令第2条第2号が、医師などが行った健康診断その他の検査の結果を加えています。

要配慮個人情報は、原則として本人の同意なしに取得できません(法第20条第2項)。厚生労働省の留意事項は、雇用の場面に当てはめてこう書いています。

(1)事業者は、法令に基づく場合等を除き、労働者の健康情報のうち要配慮個人情報に該当するものを取得する場合は、あらかじめ本人の同意を得なければならない。

厚生労働省「雇用管理分野における個人情報のうち健康情報を取り扱うに当たっての留意事項」

法令にもとづいて健診の結果を取得する場合は、本人の同意は要らない例として、同じ留意事項に挙がっています。一方、法令にもとづかない健康情報を集めるときは、原則どおり同意が要ります。

労働安全衛生法も、健康情報は労働者の健康の確保に必要な範囲で集め、その目的の範囲で保管・使用し、適正に管理するよう求めています(第104条第1項・第2項)。健診の実施の事務をした人が、そこで知った労働者の秘密を漏らすことも禁じられていて(第105条)、違反は6月以下の拘禁刑か50万円以下の罰金です(第119条第1号)。

店の運用に直すと、健康診断個人票は見られる人を決めて保管し、グループのチャットやほかのキャストの前で結果に触れない、ということになります。

業務委託のキャストにも健康診断を受けさせる必要があるか

労働安全衛生法の「労働者」は、労働基準法第9条に規定する労働者をいいます(同法第2条第2号)。健診の義務は、事業者がこの労働者に対して負うものです。業務委託の契約で働くキャストには、そのまま当てはまらないことがあります。

ただし、契約書が業務委託でも、働き方の実態から労働者にあたると判断されることがあります。その場合は、ここまでの健診の決まりが適用されます。契約の形と実態が合っているかは、労働基準監督署か社会保険労務士に確認してください。

今日できる確認

  • 雇っている人を1人ずつ、契約期間と週の労働時間で並べ、健診の対象かを確かめたか
  • 午後10時以降のシフトに週1回以上、または月4回以上入る人を洗い出し、6か月ごとの健診の対象かを確かめたか
  • 新しく雇う人の健診を、雇い入れる前後に済ませる段取りがあるか。3か月以内に受けた健診の結果の書面を持っていないかを聞いているか
  • 健康診断個人票を作り、5年間保存する場所と、見られる人を決めたか
  • 異常の所見がある人について、医師の意見を聴く先(産業医や地域産業保健センター)を決めたか

出典

※2026年9月24日に上記資料を確認しました。自分の店の働き方が深夜業を含む業務にあたるか、アルバイトが健診の対象になるか、業務委託の人が労働者にあたるかは、労働基準監督署、産業保健総合支援センター、社会保険労務士へ確認してください。

編集部(水商売経営学)

水商売経営学の編集部です。実際に店を回してきた人間と、業界の外から入った編集者で書いています。法律・税務の記事は公的資料を出典として明示します。制度の説明は出典を示して公開し、許可・届出の要否や条文の解釈など「うちの店の場合はどうか」に踏み込む記事は、行政書士・税理士の確認が取れるまで公開しません。取材した店の話は、聞いた範囲のことだけを書きます。個別の判断は店の状況によって変わるため、迷う表現は確認したうえで進めてください。

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