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会計トラブルで店がしてはいけないこと。風営法の料金表示と東京都のぼったくり防止条例

会計の金額を見た客が「聞いていない」と言う。払えないと言い出す。水商売の店なら、いつか必ず起きる場面です。このとき店がやってよいことと、やってはいけないことは、風営法と都道府県の条例で決まっています。この記事では、料金の見せ方、説明の仕方、払わない客への対応を、条文と警察庁の基準で確認します。

編集部(水商売経営学)公開 2026年9月24日14分で読めます
宵の店の会計カウンターで、伝票ホルダーを客に向けて見せる手元と、カード決済端末

この記事の要点

  • 接待をする店は、セット料金だけでなく、サービス料など名目を問わず客が払う料金を、掲示・客席に備える・注文前に示す、のいずれかで表示する(風営法第17条、施行規則第33条・第34条)。表示した料金と違う説明や、注文前にボトルを開けて困らせることは、第18条の3で禁止されている
  • 料金を払わせる目的で客を威迫して困らせることは、風営法第22条の2で禁止。警察庁の基準は、声を荒げることを例に挙げ、売掛金の回収も対象に含めている。違反は6月以下の拘禁刑か100万円以下の罰金(併科あり)
  • 東京都の条例は、公安委員会が指定した区域で接待をして酒類を出す店に、料金と違約金の表示を義務づけ、乱暴な言動や預かった所持品を隠すなどの取立てを「何人も」禁止している。違反は6月以下の拘禁刑か50万円以下の罰金

会計の伝票を見た客が「延長なんて聞いていない」と言う。カードが通らない。財布に1万円しかないと言って、帰ろうとする。水商売の店を続けていれば、どこかで必ず起きる場面です。

このときの店の動き方は、気合いや慣習ではなく、法律と条例で決まっています。この記事では、客への料金の案内と請求について、風営法、同法の施行規則、東京都のいわゆるぼったくり防止条例を原文で確認し、店で決めておく手順に落とします。主に、客の接待をする店(風営法の1号営業)が対象です。

請求する項目は、セット料金や指名料も含めてすべて料金表に載せる

風営法第17条は、風俗営業者に、料金を営業所で客に見やすいように表示するよう求めています。表示の方法は施行規則第33条にあり、次のどれかで行います。

  • 壁やドア、ついたてなどに料金表を掲げる
  • 客席に料金表を備える
  • それ以外の方法で、注文前に料金表を客に見やすく示す

何を表示するかは施行規則第34条です。キャバクラやラウンジのような1号営業では、遊興料金、飲食料金その他名義を問わず、接待を受けて遊興や飲食をする対価として客が払う料金が対象です。これとは別に、サービス料金その他名義を問わず、店の施設を使うことに客が払う料金があれば、それも表示します。

つまり、セット料金、延長料金、指名料、サービス料、チャージのように、会計で客に請求するものは、名前が何であれ料金表に載っている必要があります。会計のときに初めて出てくる項目を作らないことが出発点です。税込で書くかどうかは消費税の総額表示の話なので、料金表、税込だけで大丈夫?で確認してください。

誤認を招く説明や注文前の提供は、2025年の風営法改正で禁止された

2025年の風営法改正で、1号営業を営む風俗営業者がしてはならない行為として、第18条の3が加わりました。第1号は、第17条の料金について、事実と違う説明や、客を誤認させるような説明をすることです。

誤認させる説明とは何か。警察庁の解釈運用基準は、次の例を挙げています。

法第18条の3第1号中「客を誤認させるような説明」とは、例えば、接待飲食営業を営む風俗営業者が、法第17条に規定する料金と明示的に異なる額を説明していないものの、一定の額しか持ち合わせの現金がないなどと支払限度額を申告した客に対し「それでも大丈夫」等と申し向け、当該額の範囲内でのみ飲食等を提供すると客に誤った認識を与える説明をした場合等をいう。

警察庁「風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律等の解釈運用基準について」(令和8年7月1日)第17の7(2)イ

「1万円しかない」「カードの枠があと少ししかない」と言った客に、深く考えずに「大丈夫ですよ」と返す。現場では出やすい言葉ですが、その後の会計が申告の額を超えれば、この例に近い形になります。

同じ第18条の3の第3号は、客が注文する前に遊興や飲食の全部か一部を提供して客を困らせ、飲食などをさせることを禁止しています。基準は、注文前にシャンパンのボトルを開けることや、シャンパンコールをしてしまうことを例に挙げています。

払わない客に声を荒げて支払いを迫るのも、風営法違反になる

会計でもめたときにいちばん問題になるのが、第22条の2です。これも2025年の改正で加わった、1号営業を営む者の禁止行為です。

一 客に注文等をさせ、又は当該営業に係る料金の支払その他の財産上の給付若しくは財産の預託若しくはこれらに充てるために行われた金銭の借入れ(これと同様の経済的性質を有するものを含む。)に係る債務の弁済(次号において「料金の支払等」という。)をさせる目的で、当該客を威迫して困惑させること。

風営法 第22条の2第1号

警察庁の基準は、この「威迫」を、人を畏怖させるまでには至らないが、言葉や動作、態度で気勢を示し、相手に不安や困惑を生じさせる行為と説明しています。例として挙がっているのは、料金を払わせるために声を荒げることです。殴る、脅すといった犯罪に至らない段階でも、違反になりうるということです。

対象になる「料金の支払」には、その場の会計だけでなく、売掛金やツケの後日の支払い、キャストが立て替えた分の返済、違約金なども含まれると基準は書いています。売掛の回収で客に詰め寄るやり方も、この条文の射程に入ります。

この条文は「風俗営業者」ではなく「営む者」を主語にしています。違反の罰則は第53条にあり、6月以下の拘禁刑か100万円以下の罰金、またはその両方です。従業者が店の業務として違反すれば、店を営む法人や個人事業主も罰金の対象になります(第57条)。

東京都のぼったくり防止条例は、どの地域のどの店が対象になるか

東京都には、正式名称を「性風俗営業等に係る不当な勧誘、料金の取立て等及び性関連禁止営業への場所の提供の規制に関する条例」という条例があります。料金の表示と取立ての規制は、この条例の第4章にあります。

第4章がかかるのは「指定性風俗営業等」です。条例第2条は、客の接待をして飲食をさせる営業のうち、バーや酒場など客に酒類を出して営む営業を対象の一つに挙げています。そのうち、東京都公安委員会が指定した区域の中で営むものが、第4章の対象になります。

指定区域は公安委員会の告示で、町丁目ごとに決まっています。たとえば中央区銀座五丁目から八丁目、港区六本木三丁目・四丁目・五丁目・七丁目、新宿区歌舞伎町一丁目・二丁目、豊島区池袋二丁目などです。23区だけでなく、八王子市や立川市、武蔵野市の一部も入っています。店の所在地が入っているかは、告示の原文か管轄の警察署で確かめてください。

指定区域の対象の店は、料金に加えて、違約金その他名目を問わず客が払うことになる金銭の定めがあれば、その内容も営業所内に表示します(条例第3条)。表示の方法は、条例の施行規則第10条が、風営法の施行規則と同じく、掲げる・客席に備える・注文前に示すの3つを定めています。

接待をしないガールズバーのような店は、この第4章の対象にも、風営法第17条の対象にもなりません。カウンター越しの接客がどこから接待になるかは、ガールズバー開業の許可一覧で整理しています。

荷物を返さず支払いを迫るなど、条例で禁止されている勧誘と取立て

条例第4条は、勧誘と取立ての両方に決まりを置いています。まず第1項で、客になるよう勧誘したり広告したりするときに、料金を実際よりも著しく安いと誤認させることや、違約金について不実のことを告げることを禁止しています。店の外での声かけのルールは、客引きはどこから違法になるかにまとめています。

取立ては第2項です。

何人も、特定の指定性風俗営業等の客に対し、粗野若しくは乱暴な言動を交えて、又はその者から預かった所持品を隠匿する等迷惑を覚えさせるような方法で、当該営業に係る料金又は違約金等の取立てをしてはならない。

東京都 性風俗営業等に係る不当な勧誘、料金の取立て等及び性関連禁止営業への場所の提供の規制に関する条例 第4条第2項

主語は「何人も」です。経営者や店長だけでなく、黒服にもキャストにもかかります。キャストが雇用か業務委託かも関係ありません。

預かった上着やかばん、スマホを返さずに支払いを迫るやり方は、条文が例に挙げる「預かった所持品を隠匿する」取立てにあたりえます。 取立てを外部に頼んだ場合も、店はその相手がこの規定に違反しないよう指導しなければなりません(条例第5条第2項)。預かった上着やかばんの扱いは、客の忘れ物の扱いでも確認できます。

支払いのためにATMやコンビニまで付いて行く、出口の前に立つ、複数で囲むといった動きは、条文に直接の言葉はありません。ただ、乱暴な言葉を使わなくても、態度で相手を不安にさせれば風営法の「威迫」の説明に近づきます。大阪府の条例は、取立てで「すごみ、若しくは取り囲む等人を威迫するような行為」を禁止しています。店の手順からは外しておくのが安全です。

料金表示や取立ての決まりに違反したときの罰則と行政処分

罰則と行政処分を並べると、次のとおりです。

違反の内容根拠罰則・処分
料金を表示していない風営法第17条罰則の定めはない。公安委員会の指示、営業停止・許可取消し(第25条・第26条)
料金と違う説明、注文前の提供で困らせる風営法第18条の3罰則の定めはない。指示、営業停止・許可取消し(第25条・第26条)
料金を払わせる目的で威迫して困らせる風営法第22条の26月以下の拘禁刑か100万円以下の罰金、併科あり(第53条)。法人等にも罰金(第57条)
料金を著しく安いと誤認させる表示東京都条例第3条6月以下の拘禁刑か50万円以下の罰金(第11条第2項第2号)
乱暴な言動や所持品を隠すなどの取立て東京都条例第4条6月以下の拘禁刑か50万円以下の罰金(第11条第2項第3号)。法人等にも罰金(第12条)

東京都の条例では、公安委員会が指示をし、それに従わないときや、店の側が一定の犯罪にあたる行為をしたときに、8月以内の営業停止を命じることができます(第6条・第7条)。第7条が挙げる犯罪には、刑法の暴行、傷害、逮捕・監禁、脅迫、強要、詐欺、恐喝などが入っています。営業停止を命じられると、店の出入口に標章が貼られます(第7条第4項・第2条の5)。営業停止の命令に違反すると、1年以下の拘禁刑か100万円以下の罰金です(第11条第1項)。

会計トラブルを防ぐために、店で決めておく説明と請求の手順

ここまでの決まりを、店の運用に置き換えます。条文が求めているのは、注文の前に料金が分かり、説明と会計が一致し、払わない客にも力で迫らないことです。

  1. 料金表に、セット、延長、指名、同伴、サービス料、チャージ、ボトル、違約金の定めなど、請求しうる項目をすべて載せる。延長が自動か確認制かも書く
  2. 席に着いた時点で料金表を見せ、延長の前には客に声をかけて確かめる
  3. 客が「いくらまで」「カードの枠が少ない」と言ったら、「大丈夫」と返さず、その時点の合計を伝える。上限を超える注文は、客が了承してから受ける
  4. ボトルやシャンパンは、客の注文を受けてから開ける
  5. 伝票に、注文の時刻と品目、延長を確かめた時刻を残す

5番目の記録には理由があります。警察庁の基準は、警察が報告や資料の提出を求める場面として、表示や説明をした料金と実際の請求が違うことや、客が注文していないと言う飲食の伝票処理を確かめるために会計帳簿などを求めることを認めています。立入で見られるもの全体は警察の立入で何を見られるのかにまとめています。

それでも払わない客がいたときは、店の中で決着をつけようとしないことです。条例や風営法で確認できるのは、店がしてはいけないことまでです。未払いの料金を後から回収する方法は民事の手続きになるので、弁護士に相談してください。客が暴れる、店の人が身の危険を感じるときは、ためらわず警察を呼んでください。回収を暴力団などに頼むことができない点は、みかじめ料や用心棒代を求められたらに書いています。

大阪府や愛知県にも、料金表示や不当な取立てを規制する条例がある

料金の表示や不当な取立てを定める条例は、東京都だけのものではありません。大阪府には「大阪府酒類提供等営業に係る不当な勧誘及び料金の不当な取立ての防止に関する条例」があり、公安委員会規則で定める地域の中で、酒類を出して歓楽的雰囲気で客をもてなす営業を対象にしています。

愛知県には「酒類提供等営業に係る不当な勧誘、料金の不当な取立て等の規制等に関する条例」があり、客に酒類を出して接待をする営業を対象に、料金の表示や、乱暴な言動や所持品を隠すなどの取立ての禁止を定めています。名古屋市中区錦三丁目などは条例で特別区域と定められ、そこで営む店がこれらの規定に違反すると罰則がかかります(第20条第2項)。

この3都府県のほかの自治体については、この記事では確認していません。店のある都道府県の条例は、例規集か管轄の警察署で確かめてください。

今日できる確認

  • 会計で請求しうる項目が、名目を問わずすべて料金表に載っているか
  • 料金表を、壁に掲げる・客席に置く・注文前に見せる、のどれかで示しているか
  • 客が予算や上限を言ったとき、スタッフが「大丈夫」と返さず合計を伝える決まりになっているか
  • 払わない客の持ち物を預かる、ATMに付いて行く、出口を囲むといった対応を、店の手順から外しているか
  • 東京都の店なら、所在地が条例の指定区域に入っているか。入っていれば違約金の定めも表示しているか

出典

※2026年9月24日に上記資料を確認しました。自分の店の料金表や説明のやり方、店の所在地が条例の指定区域に入っているかは管轄の警察署へ、未払い料金の回収は弁護士へ確認してください。

編集部(水商売経営学)

水商売経営学の編集部です。実際に店を回してきた人間と、業界の外から入った編集者で書いています。法律・税務の記事は公的資料を出典として明示します。制度の説明は出典を示して公開し、許可・届出の要否や条文の解釈など「うちの店の場合はどうか」に踏み込む記事は、行政書士・税理士の確認が取れるまで公開しません。取材した店の話は、聞いた範囲のことだけを書きます。個別の判断は店の状況によって変わるため、迷う表現は確認したうえで進めてください。

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