
この記事の要点
- 指定暴力団員が組の威力を示して、営業を認める見返りの金品(みかじめ料)や、用心棒の役務を有償で受けることを求めるのは、暴対法第9条が禁止する暴力的要求行為。公安委員会は中止命令を出すことができ、命令に違反すれば3年以下の拘禁刑か500万円以下の罰金(併科あり)
- 東京都暴力団排除条例は、事業者が暴力団員などに威力を利用する見返りの利益供与をすることを禁止している(第24条)。歌舞伎町や六本木などの暴力団排除特別強化地域では、店が暴力団員から用心棒の役務を受けることや、その見返りを払うことも禁止されており、相手が暴力団員と知って違反すれば1年以下の拘禁刑か50万円以下の罰金
- 相手が暴力団かどうかを店で見極める必要はない。その場で払わず、約束も署名もせず、記録を残して警察(緊急時は110番)か暴力追放運動推進センターに相談する
開店の準備が整ったころ、見知らぬ人が来て「このあたりで店をやるなら挨拶が要る」と言う。周年の時期に、祝い金を出せと言われる。おしぼりや観葉植物、店を守る役目を、断っても受けろと迫られる。こうした場面で、払うか断るかをその場で決めなければならない状況は、店にとって大きな負担です。
払えばその場は収まるように見えます。ただ、こうした要求は暴対法(暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律)が禁止している行為にあたりえます。東京都の一部の繁華街では、払った店の側も条例違反として罰せられます。この記事では、暴対法、東京都暴力団排除条例、風営法の原文で、店が知っておく決まりと相談先を確認します。
要求を受けても、その場で払わず、約束もしない
最初に、要求を受けたときの動き方です。警視庁は、暴力団員とみられる人への対応として、次のことを挙げています。
- 来訪者の氏名、所属団体、連絡先などを確認する
- 1人で対応せず、複数で応対する
- その場しのぎの返事をせず、不当な要求ははっきり断る
- 「一筆書けば許してやる」と言われても、書類の作成や署名押印はしない
- 録音やメモで、やりとりを記録しておく
同じ警視庁のページは、一度要求をのんだ相手には何度でも要求を繰り返す、という手口の段階も説明しています。
相手が暴力団員かどうかを、店が自分で見極める必要はありません。 名乗りや風体から判断しようとして相手を問い詰めると、かえって危険です。見極めは警察の仕事です。店がすることは、払わない、約束しない、記録を残す、そして相談する、の4つです。身の危険を感じたときは、ためらわずに110番してください。
暴対法第9条が禁止する、みかじめ料や用心棒代の要求
暴対法第9条は、指定暴力団の暴力団員(指定暴力団員)が、所属する組などの威力を示して行うことを禁止している行為を、27の号で並べています。店に関係が深いのは、次の号です。
四 縄張(正当な権原がないにもかかわらず自己の権益の対象範囲として設定していると認められる区域をいう。以下同じ。)内で営業を営む者に対し、名目のいかんを問わず、その営業を営むことを容認する対償として金品等の供与を要求すること。
暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律 第9条第4号
いわゆるみかじめ料は、この第4号にあたります。「名目のいかんを問わず」とあるので、挨拶料や付合い料と呼び方を変えても変わりません。
| 号 | 禁止されている要求 | 店で起こりうる形 |
|---|---|---|
| 第2号 | 寄附金、賛助金その他名目を問わず、みだりに金品等の贈与を求める | 開店や周年の祝い金、挨拶としての金品 |
| 第4号 | 縄張内の営業者に、営業を認める見返りとして金品等を求める | みかじめ料 |
| 第5号 | 縄張内の営業者に、日常業務に使う物品の購入、興行の入場券やパーティー券の購入、用心棒の役務などの有償の提供を受けるよう求める | 用心棒代、物品やサービスの押し付け |
第5号の「用心棒の役務」は、条文で定義されています。店の業務を円滑にするため、客や従業者などとの紛争を解決したり鎮圧したりする役務のことです。
取引の相手の多くは、普通の業者です。おしぼりや観葉植物のリースを使っていること自体が問題なのではありません。断っているのに押し付けられる、脅すような言動がある、という形のときに、この条文の対象になりえます。その場合も、相手を店で判断せず、やりとりの記録を持って警察に相談してください。
警察に相談すると、相手に対して何が行われるのか
公安委員会は、指定暴力団員が暴力的要求行為をしていて、相手の業務の平穏が害されていると認めるときは、中止を命じることができます(暴対法第11条第1項)。繰り返すおそれがあれば、1年を超えない範囲で再発を防ぐ命令も出せます(同条第2項)。これらの命令に違反すると、3年以下の拘禁刑か500万円以下の罰金、またはその両方です(同法第46条第1号)。
警視庁の相談事例には、料理店が組員を名乗る男から付合い料を毎月求められ、警察署長が中止命令を出した結果、要求やいやがらせがなくなったというものが載っています。同じページは、経営者が不当な要求には応じない方針を従業員全員に伝えておくことも挙げています。
すでに払ってしまった場合の手当てもあります。中止命令などが出たあと、要求の相手から供与した金品の返還を求めるにあたって援助を申し出れば、公安委員会は連絡などの援助を行うとされています(同法第13条)。
店の側から暴力団員に用心棒を頼むことも禁止されている
暴対法は、要求する側だけを縛っているわけではありません。第30条の6第1項は、指定暴力団員が、縄張内で営業する人のために用心棒の役務を提供することを禁止しています。そのうえで第2項が、店の側を対象にしています。
営業を営む者や、その代理人、使用人その他の従業者は、指定暴力団員に、第1項で禁止された用心棒の役務の提供などを要求したり、依頼したりしてはならない、とされています。その約束の相手方になることも同じです(同条第2項)。経営者だけでなく、店長やスタッフが客とのトラブルを収めるために頼む場合も、従業者として対象に含まれます。
店側が違反を繰り返すおそれがあると、公安委員会は1年を超えない範囲で再発を防ぐ命令を出せます(同法第30条の7第4項)。この命令に違反すると、6月以下の拘禁刑か50万円以下の罰金です(同法第50条第1号)。
東京都暴力団排除条例が定める利益供与の禁止と、勧告・公表
東京都で営業する店には、東京都暴力団排除条例がかかります。条例の基本理念は、暴力団と交際しない、暴力団を恐れない、暴力団に資金を提供しない、暴力団を利用しない、の4つです(第3条)。
中心になるのが、第24条の利益供与の禁止です。事業者は、暴力団員などの規制対象者が暴力的不法行為等や暴対法第9条の行為をすること、したことの見返りとして、利益供与をしてはならないとされています(第24条第1項)。暴力団の活動を助長することや運営に資することを知って、規制対象者に利益供与をすることも禁止されています(同条第3項)。
警視庁の条例Q&Aは、第24条第1項に違反する例として、事業に関するトラブルの場に立ち会って脅しをかけてほしいと暴力団に頼んで金銭を払う場合を挙げています。債権の取立てを暴力団に頼む例も並んでいます。客の売掛の回収で困っても、こうした相手に頼む道はありません。回収の決まりは客の売掛(ツケ)を店はどう扱うかにまとめています。
第24条に違反すると、公安委員会は違反を防ぐための措置をとるよう勧告できます(第27条)。勧告を受けてから1年以内に、正当な理由なく再び違反すると、公表されることがあります(第29条第1項)。第24条第3項の違反は、勧告の前に自分から事実を報告し、今後違反しない旨の書面を出せば、勧告の対象から外れます(第28条)。
特別強化地域では、みかじめ料を払った店の側にも罰則がある
条例は、繁華街の一部を「暴力団排除特別強化地域」に指定しています(第25条の2、別表)。この規定は令和元年10月1日から施行されています。
特定営業者は、暴力団排除特別強化地域における特定営業の営業に関し、暴力団員から、用心棒の役務(業務を円滑に行うことができるようにするため顧客、従業者その他の関係者との紛争の解決又は鎮圧を行う役務をいう。以下同じ。)の提供を受けてはならない。 2 特定営業者は、暴力団排除特別強化地域における特定営業の営業に関し、暴力団員に対し、用心棒の役務の提供を受けることの対償として、又は当該営業を営むことを暴力団員が容認することの対償として利益供与をしてはならない。
東京都暴力団排除条例 第25条の3
「特定営業」には、キャバクラやクラブのような風俗営業のほか、食品衛生法の許可を受けて客に飲食させる店も入ります(第2条第11号)。スナックやバー、ガールズバーのような店も、飲食店営業の許可を受けていれば対象です。警視庁のQ&Aは、風営法の許可や届出の有無に関わらず規制の対象になるとしています(飲食店営業は食品衛生法の許可が要件)。
相手が暴力団員であることを知って第25条の3に違反した店は、1年以下の拘禁刑か50万円以下の罰金です(第33条第1項第3号)。従業者が店の業務として違反したときは、店を営む法人や個人も罰金の対象になります(第34条)。暴力団員の側も、用心棒の役務を提供することや、その見返りを受け取ることを禁止されています(第25条の4、第33条第1項第4号)。
| 条 | 店に関わる内容 | 違反したとき |
|---|---|---|
| 第18条 | 契約の相手の確認と、暴力団排除の特約を定める努力義務 | 罰則なし |
| 第24条 | 規制対象者への、威力を利用する見返りの利益供与などの禁止 | 勧告(第27条)、繰り返すと公表(第29条) |
| 第25条の3 | 特別強化地域で、暴力団員から用心棒の役務を受けること、その見返りや営業を認めてもらう見返りを払うことの禁止 | 情を知って違反すれば1年以下の拘禁刑か50万円以下の罰金(第33条) |
特別強化地域は、区と市の町丁目で決まっています。たとえば新宿区の歌舞伎町一丁目・二丁目、港区の六本木三丁目から七丁目、中央区の銀座六丁目から八丁目、豊島区の池袋一丁目・二丁目などです。店の所在地が入っているかは、条例の別表か警視庁の一覧で確認してください。
これまで払ってきた関係を切りたい店のために、条例は自首したときに刑を減軽または免除できる規定を置いています(第33条第3項)。警視庁は、最寄りの警察署か警視庁暴力団対策課(特別排除係)に相談するよう案内しています。
取引先との契約書に暴力団排除の特約を入れる努力義務
条例第18条は、事業者に契約のときの努力義務を定めています。契約が暴力団の活動を助長する疑いがあると認めるときは、相手が暴力団関係者でないことを確認するよう努めます(第1項)。書面で契約を結ぶときは、相手が暴力団関係者と分かった場合に催告せずに解除できる特約などを、契約書に定めるよう努めます(第2項)。
警視庁のQ&Aは、どちらも努力義務で、すべての契約で必ず必要なわけではないとしています。そのうえで、あとから相手が暴力団関係者と分かったときに関係を切れるよう、可能な限り特約を盛り込むよう求めています。契約のときに相手から暴力団関係者でないことを表明させる「表明確約書」を取る方法も紹介しています。
店の場合、おしぼりやリース品の業者、内装業者、送迎の委託先、店舗の賃貸借などが、書面で契約を結ぶ相手になります。新しく契約するときや更新のときに、特約が入っているかを見てください。特約を使って契約を解除する人を、脅したりつきまとったりして妨害することは、条例第21条で禁止されています。相手が暴力団関係者かもしれないと疑いを持っても、本人に確かめるのは難しいものです。その場合は、最寄りの警察署か暴追都民センターに相談するよう、警視庁のQ&Aは案内しています。
暴力団への金品の供与は、風俗営業の許可にも関わりうる
風営法第4条第1項は、許可をしてはならない人を並べています。第3号は、集団的に、または常習的に暴力的不法行為などを行うおそれがあると認めるに足りる相当な理由がある者です。警察庁の解釈運用基準は、第3号にあたる例として、暴対法上の暴力団員や、暴力団員でなくなった日から5年を経過しない者を挙げています。
第13号は、第3号にあたる者が出資、融資、取引その他の関係を通じて事業活動に支配的な影響力を持っている者を挙げています。解釈運用基準は、この号について次のような場合も考えられるとしています。
② 暴力的不法行為者が、名目のいかんを問わず、多額の金品その他財産上の利益の供与を受けていたり、売買、請負、委任その他の多額の有償契約を結んでいるという事実から、その者の事業活動に支配的な影響力を有していると認められる場合
警察庁「風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律等の解釈運用基準について」(令和8年7月1日)第12の7(8)
基準は、この号は法人だけでなく個人の事業者にもかかるとしています。許可を受けたあとに第4条第1項各号のいずれかにあたると分かれば、公安委員会は許可を取り消すことができます(風営法第8条第2号)。基準の例に照らすと、多額の金品を渡し続ける関係は、罰則だけでなく許可の欠格事由の問題にもなりうるということです。許可後の手続きと処分の関係は風俗営業の許可を取ったあとに続く手続きに、警察の立入で見られるものは警察の立入で何を見られるのかにまとめています。
警察や暴追都民センターなどの相談先と、不当要求防止責任者
相談先は次のとおりです。電話番号と受付時間は、警視庁と暴追都民センターのサイトに載っているものです。
| 相談先 | 連絡先 | 受付 |
|---|---|---|
| 警察(緊急時) | 110番 | 緊急の場合 |
| 警視庁暴力団対策課 暴力ホットライン | 03-3580-2222 | 24時間 |
| 最寄りの警察署 | 各警察署 | 各警察署による |
| 公益財団法人 暴力団追放運動推進都民センター | 0120-893-240(フリーダイヤル)、03-3291-8930 | 平日の午前9時から午後5時 |
暴力追放運動推進センター(暴追センター)は、暴対法第32条の3にもとづいて、都道府県ごとに1つ指定される団体です。暴力団員による不当な行為に関する相談に応じることや、被害者への見舞金の支給、民事訴訟の支援などを行うと定められています。相談への助言は、暴力追放相談委員が行います(同条第3項)。東京都以外の店は、所在地の都道府県のセンターに相談できます。連絡先は全国暴力追放運動推進センターのサイトに一覧があります。この記事で取り上げた条例は東京都のものです。ほかの道府県で営業する店は、所在地の条例を都道府県警察かセンターで確認してください。
日ごろの備えとしては、不当要求防止責任者の選任があります。暴対法第14条は、公安委員会が、事業者の責任者の選任や従業員の対応方法の指導などを援助すると定めています。暴対法第32条の2は、事業者に、こうした措置を講じるよう努めることと、事業活動を通じて暴力団員に不当な利益を得させないよう努めることを求めています。警視庁は、風俗営業や飲食店営業のように不当要求を受けやすい業種の事業所に、責任者を選任するよう呼びかけています。東京都では、選任届出書を事業所を管轄する警察署に出すか、オンラインで申請します。講習の受講料は無料です。
すでに被害を受けている、契約を解除したら相手が争ってきた、といった場合は、弁護士に相談することも考えてください。会計をめぐる客とのトラブルで店がしてはいけないことは会計トラブルで店がしてはいけないことに、店内の録画の扱いは防犯カメラの録画と客の連絡先をどう管理するかにまとめています。
今日できる確認
- 店の所在地が、東京都の暴力団排除特別強化地域の町丁目に入っていないか
- 要求を受けたときに、払わない・約束しない・署名しない・記録するという方針を、店長とスタッフに伝えているか
- 客とのトラブルを収めるために、外部の人に頼る習慣がないか
- 取引先や賃貸借の契約書に、暴力団排除の特約が入っているか。新規や更新の契約から入れられないか
- 110番のほか、暴力ホットラインと暴追都民センターの番号を、店のバックヤードに貼っているか
出典
- 暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律(e-Gov法令検索。第9条が暴力的要求行為、第11条が中止命令、第13条が返還の援助、第14条が事業者への援助、第30条の6・第30条の7が用心棒の役務の禁止と命令、第32条の2が事業者の努力義務、第32条の3が都道府県センター、第46条・第50条が罰則)
- 東京都暴力団排除条例(東京都例規集。第2条が特定営業の定義、第18条が契約時の措置、第24条が利益供与の禁止、第25条の2から第25条の4と別表が暴力団排除特別強化地域、第27条から第29条が勧告・適用除外・公表、第33条・第34条が罰則)
- 風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律(e-Gov法令検索。第4条第1項第3号・第13号が許可の欠格事由、第8条が許可の取消し)
- 風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律等の解釈運用基準について(通達)(警察庁・令和8年7月1日・PDF。第12の7(5)が第4条第1項第3号に該当する者の例、第12の7(8)が第13号の考え方)
- 警視庁「東京都暴力団排除条例 Q&A」(契約時の確認と特約、利益供与違反の例、適用除外、特定営業の範囲、特別強化地域の一覧、自首減免の相談先)
- 警視庁「暴力団への対応」(脅しの手口と対応方法)
- 警視庁「相談事例」(みかじめ料の要求に中止命令が出た事例)
- 警視庁「暴力団に関する相談窓口」(暴力ホットラインと暴追都民センターの電話番号・受付時間)
- 警視庁「不当要求防止責任者選任及び講習」(責任者の業務、選任を求める業種、届出と講習)
- 公益財団法人 暴力団追放運動推進都民センター「所在地等」(電話番号と受付時間)
- 全国暴力追放運動推進センター「暴追センターとは」(都道府県暴追センターの連絡先一覧)
※2026年9月24日に上記資料を確認しました。受けている要求がどの規定にあたるか、自分の店の関係をどう切るかは、警察署か暴力追放運動推進センター、弁護士へ相談してください。身の危険を感じたときは110番してください。






