水商売経営学 > 風営法・許認可 > この記事
風営法・許認可

客引きはどこから違法になるか。店の前の声かけ、SNSでの誘い、キャッチ業者への依頼

「店の前で声をかけるくらいなら大丈夫」「外のキャッチに頼めば店は関係ない」。どちらも、風営法と警察庁の基準に照らすと通りません。客引きは、風俗営業の店にも、深夜に営業するバーやガールズバーにも禁止されている行為です。この記事では、どこからが客引きになるのかを条文と基準で確認します。

編集部(水商売経営学)公開 2026年9月23日更新 2026年9月24日10分で読めます
宵の繁華街の歩道で、店の入口の脇に立つスタッフの後ろ姿

この記事の要点

  • 風営法第22条第1項は、風俗営業を営む者に客引きと、客引きのための立ちふさがり・つきまといを禁止している。深夜に営業する飲食店にも、深夜の営業について準用される
  • 警察庁の基準では、客引きは相手を特定して店の客になるよう勧誘すること。道路などの公共の場所でなくても成り立ち、マッチングアプリで近づいて来店を求める形も該当し得る
  • 違反すると6月以下の拘禁刑か100万円以下の罰金(併科あり)。法人も罰金の対象になり、店は指示や営業停止の処分を受けうる。キャッチ業者に頼んでも、店が責任を免れるわけではない

繁華街の店の前で、スタッフが通行人に声をかける。人手が足りない日は、外のキャッチに一人いくらで頼む。業界では珍しくない光景ですが、風営法はこの両方を問題にしています。

この記事では、どこからが客引きになるのかを、風営法の条文と警察庁の解釈運用基準で確認します。東京都で営業する店向けに、都の条例と区の条例にも触れます。

客引きは、風営法が店に禁止している行為

風営法第22条第1項は、風俗営業を営む者がしてはならない行為を並べています。その最初の2つが客引きです。

一 当該営業に関し客引きをすること。 二 当該営業に関し客引きをするため、道路その他公共の場所で、人の身辺に立ちふさがり、又はつきまとうこと。

風営法 第22条第1項第1号・第2号

禁止されているのは「風俗営業者」ではなく「風俗営業を営む者」です。警察庁の基準は、この書き方から、無許可で風俗営業をしている者も対象になると説明しています。許可を取っていない店だから当てはまらない、という理屈は通りません。

キャバクラやラウンジのような接待をする店だけの話でもありません。次の見出しで見るとおり、深夜に営業する飲食店にもかかります。

深夜に営業するバーやガールズバーにもかかる

風営法第32条第3項は、第22条第1項の禁止を、飲食店営業を営む者に準用しています。客引きとつきまといの部分は、読み替えによって「深夜における営業に限る」とされています。

深夜は午前0時から午前6時までです(法第13条第1項)。深夜酒類提供飲食店営業の届出で営業しているバーやガールズバーが、深夜の営業のために客引きをすれば、この準用の対象になります。届出の手順は深夜酒類提供飲食店営業の届出の手順に、ガールズバーの手続き全体はガールズバー開業の許可一覧にまとめました。

相手を特定して店に誘えば、場所を問わず客引き

「客引き」の意味は、条文には書かれていません。警察庁の解釈運用基準が定義しています。

法第22条第1項第1号中「客引き」とは、相手方を特定して営業所の客となるように勧誘することをいい、例えば、マッチングアプリ等のインターネット上で、当初は営業所の客となるよう勧誘する目的を秘して近付き、交際関係に至った段階で来店を求めるような場合であっても、「客引き」に該当し得る場合もあるものと解される。

警察庁「風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律等の解釈運用基準について」(令和8年7月1日)第17の10(1)

同じ箇所で、基準は客引きについて「道路その他公共の場所」や「公衆の目に触れるような方法」でなされることは要件ではない、とも書いています。路上だけの話ではありません。

マッチングアプリの例は、出会いを装って近づき、あとから来店を求める形です。相手を特定して店の客になるよう誘っているかどうかで見るので、路上かネットかは関係がありません。 SNSのダイレクトメッセージで知らない人を一人ずつ誘う運用をしているなら、この定義に照らして確認が要ります。判断に迷う運用は、やり方を具体的に説明して管轄の警察署に相談してください。メールやSMSで客に営業の連絡を送るときの決まりは、客に送る営業のメールやSMSで扱っています。

声をかけて待つのは? 立ちふさがる・つきまとうは別の違反

基準は、客引き(第1号)と、客引きのための立ちふさがり・つきまとい(第2号)の関係も説明しています。

店名を告げずに「お時間ありませんか」などと声をかけ、相手の反応を待っている段階は、まだ客引きにはあたらないとしています。ただし、そのときに相手の前に立ちふさがったり、つきまとったりすれば第2号にあたります。

整理すると、次のようになります。

行為基準に照らすと
店名を告げず声をかけ、反応を待つだけまだ客引きにはあたらない
声をかけながら、相手の前に立ちふさがる・ついて歩く第2号(客引きのための立ちふさがり・つきまとい)
相手を特定して、自分の店に来るよう誘う第1号(客引き)
交際を装ってネット上で近づき、あとで来店を求める第1号に該当し得る

ホストクラブの従業者が、個人的な交際の申込みや求人を装って女性に声をかけ、立ちふさがったりつきまとったりする例も、基準は取り上げています。黒服を着てビラを持っているなど、外から見て客引きのための行為と分かる状況なら、第2号にあたるとしています。「声かけだけなら大丈夫」は、立ち止まらない相手を追いかけた時点で崩れます。

キャッチ業者に頼んでも、店は逃げられない

店の外の人に客引きを頼む形は、どう扱われるか。基準は、風俗営業を営む者でない人でも、営む者と意を通じて禁止行為をすれば共犯として処罰できると書いています。頼んだ店と、実際に声をかけた人の両方が問われうるということです。

東京都の迷惑防止条例(公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例)は、さらに直接的です。

何人も、対償を供与し、又はその供与の約束をして、他人に前項の規定に違反する行為を行わせてはならない。

東京都 公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例 第7条第2項

お金を払って客引きをさせること自体が、条例違反になります。罰則は100万円以下の罰金です(同条例第8条第3項)。

違反したときの罰則と行政処分

風営法の罰則は第53条にあります。第22条第1項第1号・第2号(第32条第3項で準用する場合を含む)に違反すると、6月以下の拘禁刑か100万円以下の罰金、またはその両方です。

従業者が店の業務として違反したときは、行為者のほかに、店を営む法人や個人事業主にも罰金が科されます(法第57条)。スタッフが勝手にやったことでも、店の業務として行われれば店の側の問題になります。

刑事罰とは別に、公安委員会による行政処分があります。

店の種類処分の根拠内容
風俗営業の許可を受けた店法第25条・第26条指示、6月以内の営業停止、許可の取消し
深夜に営業する飲食店法第34条指示、6月以内の営業停止

許可を取り消されると、取消しの日から5年間は風俗営業の許可を受けられません(法第4条第1項第6号)。許可後の手続きと処分の関係は許可後に続く手続きに、立入で見られるものは警察の立入で何を見られるのかにまとめています。

東京都の条例と、区の客引き防止条例

東京都で営業する店は、風営法に加えて都の迷惑防止条例を確認します。第7条第1項は、公共の場所で不特定の人に対する次の行為などを禁止しています。

  • 異性による接待をして酒類を伴う飲食をさせる店について、客引きをすること(第3号)
  • 人の身体や衣服をとらえる、進路に立ちふさがる、身辺につきまとうなど、しつこく客引きをすること(第4号)
  • 専ら異性に対する接待をして酒類を伴う飲食をさせる仕事に就くよう勧誘すること(第5号ロ)

第5号は、キャストのスカウトを路上でする行為にかかります。客引きだけでなく、人集めの声かけも条例の対象です。第7条第1項に違反すると、50万円以下の罰金または拘留もしくは科料です(同条例第8条第4項)。

公安委員会が指定した区域では、一部の客引きや勧誘の相手を待つ行為も禁止されています(同条第3項)。指定区域は警視庁が町丁目単位で公表していて、新宿区歌舞伎町一丁目・二丁目や港区六本木三丁目から七丁目などが入っています。

区や市が独自に客引き防止条例を置いている場所もあります。新宿区の条例は、居酒屋・カラオケ店・キャバクラなどへの客引き、キャバクラなどで働くよう誘う勧誘、公共の場所で相手を待つ行為を禁止し、指導・警告・勧告、公表や過料の仕組みを設けています。店のある区や市の条例は、自治体のサイトで確認してください。

客引きに頼らない集客の置き場所

客引きをやめると、入口の前で拾っていた客は減ります。その分を、店を探している人に見つけてもらう集客に移していくことになります。検索や地図で店を探す人に届くGoogleマップの整え方は、水商売のMEO入門に書きました。

看板、店のSNSの投稿、求人広告のような不特定の人に向けた広告は客引きとは別の話ですが、風俗営業の店の広告には風営法の広告規制があります。表現の決まりは「No.1」が使えなくなった店の広告で確認してください。

今日できる確認

  • スタッフやキャストが店の外で声をかけていないか。声をかけている場合、立ち止まらない相手を追っていないか
  • 外部の人に、報酬を払って客引きやスカウトを頼んでいないか
  • SNSやアプリで、知らない人を一人ずつ店に誘う運用をしていないか
  • 店の所在地が、東京都の客待ち規制の指定区域や、区の客引き防止条例の対象区域にあたらないか
  • 深夜営業をしている飲食店なら、深夜の客引きが風営法の準用対象になることを、スタッフに伝えているか

出典

※2026年9月23日に上記資料を確認しました。自分の店のやり方が客引きにあたるかは、具体的な方法を持って管轄の警察署か行政書士へ確認してください。

編集部(水商売経営学)

水商売経営学の編集部です。実際に店を回してきた人間と、業界の外から入った編集者で書いています。法律・税務の記事は公的資料を出典として明示します。制度の説明は出典を示して公開し、許可・届出の要否や条文の解釈など「うちの店の場合はどうか」に踏み込む記事は、行政書士・税理士の確認が取れるまで公開しません。取材した店の話は、聞いた範囲のことだけを書きます。個別の判断は店の状況によって変わるため、迷う表現は確認したうえで進めてください。

この記事は2026年9月24日に更新しました。

あわせて読みたい

RELATED
メニュー
記事を検索
LINEで無料相談