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風営法・許認可

警察の立入で何を見られるのか。風営法第37条と、店に備えておく5つの記録

立入は、抜き打ちで来ます。そのときに慌てるかどうかは、その日の運ではなく、5つの記録がいつでも出せる状態にあるかで決まります。許可証の掲示、従業者名簿、本人確認の記録、料金の表示、管理者の指導記録。この記事では、立入の法的な根拠と、店に備えておくものを整理します。

編集部(水商売経営学)公開 2026年9月22日7分で読めます
宵の店内で、許可証の掲示と名簿のファイルを棚から取り出す手元

営業中に、私服の警察官が入口に立つ。「風営法の立入です」。店長が呼ばれ、許可証はどこか、名簿を見せてほしい、と言われる。

この場面で困る店は、法令を知らないのではなく、記録がその場に無いだけです。名簿は事務所のパソコンの中、本人確認の書類は面接のときにコピーしたはずだが場所が分からない。この記事では、立入の根拠を条文で確認したうえで、店に備えておく5つの記録を整理します。

立入の根拠は風営法第37条

立入の権限は、風営法第37条に書かれています。対象は風俗営業の営業所だけではありません。

警察職員は、この法律の施行に必要な限度において、次に掲げる場所に立ち入ることができる。ただし、第一号、第二号又は第四号から第七号までに掲げる営業所に設けられている個室その他これに類する施設で客が在室するものについては、この限りでない。 一 風俗営業の営業所 (中略) 六 第三十三条第六項に規定する酒類提供飲食店営業の営業所 七 前各号に掲げるもののほか、設備を設けて客に飲食をさせる営業の営業所(深夜において営業しているものに限る。)

風営法 第37条第2項(抜粋)

風俗営業の許可を取った店、深夜酒類提供飲食店営業の届出をした店、届出の有無にかかわらず深夜に営業している飲食店。この3つはすべて対象です。「うちは届出だけだから立入は無い」ということはありません。

同条第1項は、公安委員会が営業者に対して業務に関する報告や資料の提出を求めることができると定めています。立入とは別に、書類の提出を求められることもあります。

客がいる個室には立ち入れない。身分証の提示は必須

条文には、店の側が知っておくべき2つの限定があります。

ひとつは、客が在室している個室には立ち入れないことです。個室やそれに類する施設で、客がいる部屋は対象から外れています。客がいない個室、カウンター、ホール、バックヤードは対象です。

もうひとつは、身分証の提示です。

3 前項の規定により警察職員が立ち入るときは、その身分を示す証明書を携帯し、関係者に提示しなければならない。 4 第二項の規定による権限は、犯罪捜査のために認められたものと解してはならない。

風営法 第37条第3項・第4項

提示を求めるのは店の権利です。第4項は、この立入が犯罪捜査のためのものではないことを明記しています。立入は、法律が守られているかを確認するための行政上の手続きです。

店に備えておく5つの記録

立入で確認されるのは、風営法が店に求めている義務が守られているかです。条文から整理すると、店に備えておくものは5つに絞れます。

備えておくもの根拠置く場所
許可証(または認定証)の掲示法第6条営業所の見やすい場所
従業者名簿法第36条・施行規則第106条営業所ごと。退職後3年間保存
接客従業者の本人確認の記録法第36条の2営業所。管理者が管理する
料金の表示法第17条営業所内で客に見やすい場所
管理者の指導・点検の記録法第24条・施行規則第38条営業所

このうち、その場で出せない店が多いのが名簿と本人確認の記録です。名簿は営業所ごとに備えるものなので、本部にまとめて置いていると、その営業所には無いことになります。

許可証は掲示する。名簿と本人確認は営業所に置く

許可証の掲示は、風営法第6条が定めています。額に入れて店の奥にしまってある店がありますが、条文は「営業所の見やすい場所に掲示」です。

従業者名簿は、風俗営業者だけでなく、深夜酒類提供飲食店営業者や深夜に営業する飲食店営業者にも求められています。名簿に載せる項目と、体入で来た人の扱いは体入も従業者名簿が必要にまとめました。

風俗営業者(中略)は、その従業者が退職した日から起算して三年を経過する日まで、その者に係る従業者名簿を備えておかなければならない。

風営法施行規則 第106条(抜粋)

辞めた人の名簿を捨てている店は、ここで引っかかります。退職後3年間は、営業所に備えておくものです。

本人確認の記録は、接待飲食等営業を営む風俗営業者と深夜に酒類を提供する飲食店営業者が、客に接する業務に従事させる人の生年月日と国籍を法令で定められた書類で確認したものです。施行規則第38条は、この確認に係る記録の管理を管理者の業務に挙げています。年齢の線を守っているかは、この記録で見られます。

管理者が「いる」だけでなく、記録を残しているか

風俗営業の営業所には、管理者を1人選任する義務があります(法第24条)。立入で見られるのは、管理者が選任されているかだけではなく、管理者の業務が行われているかです。

施行規則第38条は、管理者の業務として、従業者への指導計画を作成して実地に指導しその記録を作成すること、構造・設備の点検の実施と記録の管理、従業者名簿と本人確認記録の管理、苦情の処理などを挙げています。

つまり、管理者の名前が許可証に載っているだけでは足りません。指導した記録、点検した記録が営業所にあることまでが業務です。紙でもデータでも構いませんが、その営業所で出せる状態にしておきます。

営業時間、年少者、広告も同時に見られる

記録のほかに、営業の実態そのものも見られます。店内に客がいる時刻と許可の内容が合っているか(法第13条)、18歳未満の人が接待や午後10時以降の接客をしていないか、20歳未満に酒類を出していないか(法第22条)、店内に掲げている広告物が規制に反していないか(法第16条)です。

営業時間の決まり方は風営法の営業時間に、広告の規制は「No.1」が使えなくなった店の広告は、次に何を出せばいいのかにまとめました。どちらも、立入の現場で即座に分かる項目です。

立入で指摘を受けたあとの対応は、店ごとに違います

立入で指摘があった場合、その後は指示(法第25条)や営業停止・許可取消(法第26条)の手続きに進むことがあります。どの段階で何を求められるかは、指摘の内容と店の状況で変わります。この記事は立入の根拠と備えを整理したもので、指摘を受けたあとの個別の対応は行政書士か弁護士に相談してください。

今日できる確認

  • 許可証が、営業所の見やすい場所に掲示されているか
  • 従業者名簿が、本部ではなくその営業所にあるか。辞めた人の分も3年間残しているか
  • 接客従業者の本人確認の記録が、名簿とセットで営業所にあるか
  • 料金の表示が、店内で客に見やすい場所にあるか
  • 管理者の指導記録・点検記録が、営業所にあるか。最後に書いたのはいつか
  • 営業時間・年少者・広告の3つを、いま店内に立って確認したか

名簿と本人確認の記録は、体入の初日に揃える運用にしておくと、あとから探すことがなくなります。初日の流れは体入初日の受け入れに書きました。

出典

※2026年9月22日に上記資料を確認しました。立入で指摘を受けた場合の対応は、行政書士か弁護士へ相談してください。

この記事の要点

  • 風営法第37条は、警察職員が風俗営業の営業所や深夜に営業する飲食店に立ち入ることを認めている。客がいる個室には立ち入れず、身分証の提示が要る
  • 店に備えておくのは、許可証の掲示、従業者名簿、接客従業者の本人確認記録、料金の表示、管理者の指導と点検の記録
  • 名簿は退職後3年間、本人確認の記録は管理者が管理する。「あとで出します」が通らない前提で、営業所に置いておく
編集部(水商売経営学)

水商売経営学の編集部です。実際に店を回してきた人間と、業界の外から入った編集者で書いています。法律・税務の記事は公的資料を出典として明示します。制度の説明は出典を示して公開し、許可・届出の要否や条文の解釈など「うちの店の場合はどうか」に踏み込む記事は、行政書士・税理士の確認が取れるまで公開しません。取材した店の話は、聞いた範囲のことだけを書きます。個別の判断は店の状況によって変わるため、迷う表現は確認したうえで進めてください。

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