
この記事の要点
- 雇っている人を午後10時から午前5時までの間に働かせたら、その時間は通常の賃金の25%以上を上乗せして払う(労働基準法第37条第4項)。時給1,500円なら深夜の1時間は1,875円以上
- 1日8時間などの法定労働時間を超えた残業が深夜に及べば50%以上、法定休日の労働が深夜に及べば60%以上(施行規則第20条)
- 管理監督者にあたる店長でも、深夜の割増は必要。そもそも店長が管理監督者にあたるかは、肩書ではなく権限・勤務の実態・待遇で判断される
夜の店は、開店から閉店まで、ほとんどの時間が午後10時を過ぎます。昼の飲食店なら一部の人にしか関係しない深夜の割増賃金が、この業界では雇っている全員に毎日かかります。
この記事では、深夜の割増賃金の決まり、時給での計算の仕方、店長の扱い、記録の残し方を、労働基準法と厚生労働省の資料で確認します。キャストやスタッフを雇用契約で働かせている店が対象です。
午後10時から午前5時は、25%以上を上乗せする
深夜の割増賃金は、労働基準法第37条第4項が定めています。
使用者が、午後十時から午前五時まで(厚生労働大臣が必要であると認める場合においては、その定める地域又は期間については午後十一時から午前六時まで)の間において労働させた場合においては、その時間の労働については、通常の労働時間の賃金の計算額の二割五分以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならない。
労働基準法 第37条第4項
ポイントは、残業かどうかに関係なく、午後10時から午前5時の時間帯に働いた分にかかることです。午後8時に出勤して午前1時に上がるシフトなら、午後10時から午前1時までの3時間が深夜の割増の対象です。妊娠中や産後の人から請求があれば深夜に働かせられないことは、妊娠したら店が守ることにまとめています。
違反すると、6月以下の拘禁刑か30万円以下の罰金です(同法第119条)。
時給で計算するとこうなる
時給1,500円のスタッフで考えます。深夜の1時間は、1,500円に25%の375円を足した1,875円以上になります。
| 働いた時間 | 時間帯 | 1時間あたり | 合計 |
|---|---|---|---|
| 午後8時〜午後10時(2時間) | 通常 | 1,500円 | 3,000円 |
| 午後10時〜午前1時(3時間) | 深夜 | 1,875円 | 5,625円 |
| 計5時間 | 8,625円 |
同じ5時間でも、全部を1,500円で払えば7,500円です。この1,125円の差が、深夜の割増にあたる分です。
割増の元になる「通常の賃金」から除いてよい手当は、法律と施行規則で決まっています。家族手当、通勤手当、住宅手当、臨時に支払われた賃金などです(同法第37条第5項、施行規則第21条)。指名料やドリンクの歩合のように働いた成果で決まる賃金は、この除外の一覧には入っていません。歩合の賃金がある場合の計算の仕方は、社会保険労務士に確認してください。歩合のある給料が最低賃金を下回っていないかは、時給・歩合と最低賃金で確認できます。
残業や休日と重なれば、率が上がる
労働時間は原則として1日8時間、週40時間までです(同法第32条)。飲食店や接客業で常時10人未満の労働者を使う店は、週44時間までの特例があります(施行規則第25条の2)。これを超えて働かせるには、労使の協定(いわゆる36協定)を結んで労働基準監督署に届け出る必要があり、超えた時間には25%以上の割増がかかります。
この残業が深夜の時間帯に及ぶと、率が重なります。
| 状況 | 割増の率 | 根拠 |
|---|---|---|
| 深夜だけ | 25%以上 | 法第37条第4項 |
| 法定労働時間を超えた残業が深夜に及ぶ | 50%以上 | 施行規則第20条第1項 |
| 法定休日の労働が深夜に及ぶ | 60%以上 | 施行規則第20条第2項 |
たとえば午後6時から翌午前4時まで、途中で1時間休憩して9時間働かせた場合、8時間を超えた最後の1時間(午前3時〜午前4時)は、残業でかつ深夜なので50%以上になります。長い営業日に同じ人を通しで入れるシフトは、ここで割増が大きくなります。法定休日の決まりと休日に出てもらうときの手続きは、休憩・休日と休日出勤の決まりに書きました。
店長にも深夜手当はいる
「店長は管理職だから、残業代も深夜手当もいらない」という扱いをしている店があります。深夜の分については、これは違います。
管理監督者であっても、深夜業(22時から翌日5時まで)の割増賃金は支払う必要があります。
厚生労働省「労働基準法における管理監督者の範囲の適正化のために」
労働基準法第41条第2号の「監督若しくは管理の地位にある者」(管理監督者)は、労働時間・休憩・休日の規定の対象外です。ただ、深夜の割増はこの対象外に含まれない、というのが厚生労働省の説明です。
そもそも、店長という肩書があれば管理監督者になるわけではありません。 厚生労働省は、チェーン展開する飲食店などの店長について、管理監督者にあたるかの判断要素を示しています(平成20年9月9日の通達)。次のような実態があると、管理監督者であることを否定する要素になるとしています。
- 店のシフト表(勤務割表)を作る権限や、残業を命じる権限が実質的にない
- 遅刻や早退で給料を減らされたり、評価を下げられたりする
- 長時間働いた結果、時間単価に直すとアルバイトの時給に届かない
管理監督者にあたらない店長には、深夜の割増に加えて、残業の割増も必要です。自分の店の店長がどちらにあたるかは、権限と勤務の実態を説明して、労働基準監督署か社会保険労務士に確認してください。
深夜の時間数を、賃金台帳に書いて残す
割増を払ったことは、記録で示します。使用者は賃金台帳を作り、深夜に働かせた時間数を、1人ずつ書き込まなければなりません(同法第108条、施行規則第54条第1項第6号)。賃金台帳は、当分の間3年間保存します(同法第109条、附則第143条)。
深夜の時間数を正しく数えるには、出勤と退勤の時刻の記録が前提になります。記録の残し方は当日欠勤と遅刻を口頭で済ませると何が起きるかに、シフトの集め方はシフトを集める・催促する・配る手順にまとめました。出退勤の時刻からシフトと勤怠を自動で集計するツールもあります。
給与明細や労働条件通知書には、通常の時給と深夜の割増分を分けて書いておくと、あとから「割増を払っていたか」を示しやすくなります。深夜の分を時給に含める形にしている店は、その形で割増を払ったと説明できるかを社会保険労務士に確認してください。明細に書く項目は給与明細の決まりで整理しています。
今日できる確認
- 午後10時以降に働いた時間に、25%以上を上乗せして払っているか
- 残業が深夜に及んだ日に、50%以上で計算しているか
- 店長の深夜の分を払っているか。店長が管理監督者にあたるかを、実態で確かめたか
- 賃金台帳に、深夜に働いた時間数を1人ずつ書いているか
- 給与明細で、深夜の割増分を分けて示しているか
出典
- 労働基準法(e-Gov法令検索。第32条が労働時間、第37条が割増賃金、第41条が適用除外、第108条・第109条が賃金台帳と保存、第119条が罰則、附則第143条が保存期間の特例)
- 労働基準法施行規則(e-Gov法令検索。第20条が時間外・休日と深夜が重なる場合、第21条が割増の基礎から除く賃金、第25条の2が週44時間の特例、第54条が賃金台帳の記載事項)
- 厚生労働省「労働基準法における管理監督者の範囲の適正化のために」(PDF。多店舗展開する飲食業等の店長の判断要素、管理監督者の深夜割増)
※2026年9月24日に上記資料を確認しました。自分の店の賃金の組み方や、店長が管理監督者にあたるか、業務委託の人が労働者にあたるかは、労働基準監督署か社会保険労務士へ確認してください。






