
この記事の要点
- 個人で店を始めたら、税務署に個人事業の開業・廃業等届出書を、開業した年分の確定申告の期限(翌年3月15日)までに出す。2025年までは「1か月以内」だった期限が、2026年1月1日施行の改正で変わった(所得税法第229条)
- 青色申告にするなら、1月16日以後に開業した人は開業の日から2か月以内に青色申告承認申請書を出す(第144条)。家族に給与を払うなら青色事業専従者給与に関する届出書も同じ期限。人を雇ったら給与支払事務所等の開設届出書を1か月以内に出す(第230条)
- 都道府県への事業開始の申告は、期限も様式も都道府県で違う。東京都は事業の開始の日から15日以内、大阪府は開業した日から2月以内。消費税は、国税庁の案内では新規開業年とその翌年は原則として免税事業者になる
スナックやガールズバーを個人で始めるとき、先に動くのは物件探しと、保健所や警察署の手続きです。開店の準備が落ち着いたころに、税務署に何を出すのか、都税事務所にも書類が要るのかという疑問が出てきます。
この記事では、個人事業主として水商売の店を開いたときに、税務署と都道府県へ出す届出を、所得税法と国税庁・東京都主税局の案内で確認します。開業届の期限は2026年1月1日から変わりました。2025年以前の情報で準備している人は、期限を読み替えてください。
個人で店を開業したときに税務署と都道府県へ出す書類と期限の一覧
国税庁は、個人が新たに事業を始めたときの届出書を、タックスアンサーNo.2090で一覧にしています。水商売の店に関係が深いものと、都道府県への申告を並べると次のとおりです。
| 書類 | 出す人 | 提出先 | 期限 | 根拠・案内 |
|---|---|---|---|---|
| 個人事業の開業・廃業等届出書 | 新たに事業を始めた人 | 納税地の税務署 | 開業した年分の確定申告の期限まで | 所得税法第229条 |
| 所得税の青色申告承認申請書 | 青色申告にしたい人 | 納税地の税務署 | 1月16日以後の開業なら開業の日から2か月以内 | 同法第144条 |
| 青色事業専従者給与に関する届出書 | 家族に払う給与を必要経費にしたい青色申告の人 | 納税地の税務署 | 1月16日以後の開業なら開業の日から2か月以内 | 同法第57条第2項 |
| 給与支払事務所等の開設・移転・廃止届出書 | 人を雇って給与を払う人 | 店の所在地の税務署 | 給与支払事務所等を設けてから1か月以内 | 同法第230条 |
| 源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書 | 給与を受ける人が常時10人未満で、納付を年2回にしたい人 | 店の所在地の税務署 | 随時 | 同法第216条・第217条 |
| 事業開始等の申告(個人事業税) | 都道府県内で事業を始めた人 | 都税事務所・府県税事務所など | 都道府県で違う(東京都は15日以内) | 東京都主税局・大阪府の案内 |
納税地は、原則として住所地です(所得税法第15条第1号)。住所地に代えて店の所在地を納税地にすることもできます(同法第16条第2項)。国税庁は、確定申告書の納税地の欄に店の所在地を書いて出すことで変えられると案内しています(タックスアンサーNo.2090)。住まいと店で管轄の税務署が違う人は、開業届と給与の届出で提出先が分かれることがあるので、書類ごとに確かめてください。
ここに並ぶ書類は、風営法の許可や深夜酒類提供飲食店営業の届出(警察署)、飲食店営業許可(保健所)とは提出先が違う、別の手続きです。許可と届出の全体はスナック開業の許可一覧とガールズバー開業の許可一覧にまとめています。国税庁は、年金事務所や労働基準監督署などへの届出が必要になる場合もあるとしています。人を雇ったときの保険の手続きはスタッフを1人でも雇ったら必要な保険の手続きで確認できます。
個人事業の開業届は、開業した年分の確定申告期限までに税務署へ出す
個人事業の開業・廃業等届出書(開業届)の期限は、所得税法第229条が定めています。
居住者又は非居住者は、国内において新たに不動産所得、事業所得又は山林所得を生ずべき事業を開始し、又は当該事業に係る事務所、事業所その他これらに準ずるものを設け、若しくはこれらを移転し、若しくは廃止した場合には、財務省令で定めるところにより、その旨その他必要な事項を記載した届出書を、その事実があつた日の属する年分の所得税に係る確定申告期限までに、税務署長に提出しなければならない。
所得税法 第229条
確定申告の期限は、翌年の3月15日です(同法第120条第1項)。2026年10月に開業した人なら、開業届の期限は2026年分の確定申告の期限である2027年3月15日になります。国税庁の案内では、期限が土日や祝日にあたるときは、その翌日が期限です。
この期限は2026年1月1日に変わりました。e-Gov法令検索で改正の履歴を見ると、2025年12月まで適用されていた第229条は「その事実があつた日から一月以内」でした。令和7年の所得税法等の一部を改正する法律で、今の文言に改められています。開業届を1か月以内に出すと書いた解説は、改正前の情報です。
開業届はe-Taxで出せます。書面で作って税務署へ持参するか、郵送で出すこともできます(国税庁「A1-5 個人事業の開業届出・廃業届出等手続」)。
青色申告を利用するなら、開業した日から2か月以内に承認申請書を出す
青色申告で確定申告をするには、事前に税務署長の承認を受けます(所得税法第143条)。承認の申請の期限は第144条にあります。
その年分以後の各年分の所得税につき前条の承認を受けようとする居住者は、その年三月十五日まで(その年一月十六日以後新たに同条に規定する業務を開始した場合には、その業務を開始した日から二月以内)に、当該業務に係る所得の種類その他財務省令で定める事項を記載した申請書を納税地の所轄税務署長に提出しなければならない。
所得税法 第144条
1月1日から1月15日までに開業した人の期限は、その年の3月15日です。1月16日以後に開業した人の期限は、開業した日から2か月以内です。青色申告にしたい人は、開業届の期限を待たずに、開業した日から2か月以内に青色申告承認申請書を出します。 開業した年の分に間に合わなかった場合、翌年分から青色にするなら、翌年の3月15日までに申請します。
国税庁は青色申告を、一定の水準で記帳し、その記帳にもとづいて正しく申告する人が有利な扱いを受けられる制度として説明しています(タックスアンサーNo.2070)。主な特典として挙げているのは、青色申告特別控除、家族に払う青色事業専従者給与、売掛金などの貸倒れに備える貸倒引当金、赤字を翌年以後3年間繰り越して差し引く純損失の繰越しです。客の売掛(ツケ)の管理は客の売掛を店はどう扱うかにまとめています。
青色申告の承認を受けた人は、帳簿を備え付けて取引を記録し、保存しなければなりません(同法第148条第1項)。国税庁は、帳簿と書類の保存期間を原則7年とし、請求書や納品書などは5年でよいものもあると説明しています。青色申告特別控除の金額と要件は、2027年1月1日に施行される改正で見直されます(租税特別措置法第25条の2)。申告する年分にいくら控除できるかは、その時点の国税庁の案内を確認するか、税理士に相談してください。
家族に払う給与を経費にするには、青色事業専従者給与に関する届出書を出す
配偶者や子どもが店を手伝い、その家族に給料を払う店のための届出です。青色申告の人が、生計を一にする15歳以上の親族で、もっぱらその事業に従事する人に給与を払った場合、届け出た金額の範囲内で、労務の対価として相当な額を必要経費にできます(所得税法第57条第1項)。
国税庁は、専従者にあたる要件の1つとして、その年を通じて6か月を超える期間、事業にもっぱら従事していることを挙げています(タックスアンサーNo.2075)。届出書には、専従者の氏名、仕事の内容、給与の金額、支給の時期などを書きます。開業後に専従者が増えるときや給与を増やすときは、変更届出書を遅滞なく出します。
提出期限は青色申告の申請と同じ形です。1月16日以後に開業した人は、開業の日から2か月以内に出します(同条第2項)。開業したあとで新たに家族が専従者になった場合は、専従者がいることとなった日から2か月以内です(国税庁「A1-10 青色事業専従者給与に関する届出手続」)。
白色申告の人には、家族に払った給与を必要経費にする代わりに、事業専従者控除があります。控除額は、配偶者が最高86万円、15歳以上のほかの親族が最高50万円です。青色と白色のどちらの場合も、専従者として扱った家族は、配偶者控除や扶養控除の対象となる同一生計配偶者・扶養親族にはなれません(タックスアンサーNo.2075)。家族にいくら払うのが相当かは、仕事の内容や同じ規模の店の給与の状況などで判断されるため、金額を決める前に税理士に相談してください。
スタッフを雇う店は、1か月以内に給与支払事務所等の開設届出書を出す
キャストやスタッフを雇用契約で雇い、給与を払う店は、給与の支払事務を扱う事務所を設けたことを税務署に届け出ます。期限は、事務所を設けた日から1か月以内です(所得税法第230条)。提出先は店の所在地の税務署で、開業届の提出先と違う場合があります。
この届出も、2026年1月1日に扱いが変わりました。2025年12月まで適用されていた第230条には「その事実につき前条の届出書を提出すべき場合を除き」という言葉があり、同じ事実について開業届を出す場合は、この届出書を別に出す必要がありませんでした。改正でこの部分が削られ、国税庁の一覧でも開業届と給与支払事務所等の開設届出書は別の書類として並んでいます。開業と同時に人を雇う店は、両方を出してください。
給与を払うと、給与明細の交付や源泉徴収も始まります。源泉徴収税額表の使い方と納付の期限は日払いの給料から所得税を源泉徴収するときに、明細に書く項目は給与明細の決まりに、日払いや前借りの扱いは日払い・前借り・罰金の天引きにまとめました。
ここまでの届出は、雇用契約で働く人に給与を払う場合の話です。業務委託の契約で働くキャストに当てはまるかは、契約の実態で変わります。キャストへの支払いを給与と報酬のどちらで扱うかは、税務署か税理士に確認してください。
給与を受ける人が常時10人未満の店は、源泉所得税を半年ごとにまとめて納められる
給与から源泉徴収した所得税は、原則として、給与を支払った月の翌月10日までに納めます(国税庁タックスアンサーNo.2505)。給与を受ける人が常時10人未満の店は、税務署長の承認を受けると、半年分をまとめて納められます(所得税法第216条)。この仕組みを納期の特例といいます。
| 給与を払った月 | 原則の納付期限 | 納期の特例の納付期限 |
|---|---|---|
| 1月〜6月 | それぞれ翌月10日 | 7月10日 |
| 7月〜12月 | それぞれ翌月10日 | 翌年1月20日 |
申請書を出す時期は決まっていません。税務署長から却下の通知がなければ、申請書を出した月の翌月末日に承認があったものとみなされます。そのうえで、申請書を出した月の翌月に源泉徴収する所得税から、特例の対象になります(タックスアンサーNo.2505)。納付期限が土日や祝日にあたるときは、休日明けの日が期限です。
特例の対象は、給与や退職金から源泉徴収した所得税と、税理士・弁護士・司法書士などの一定の報酬から源泉徴収した所得税に限られています。給与を受ける人が常時10人以上になったら、「源泉所得税の納期の特例の要件に該当しなくなったことの届出書」を出します。
都道府県への事業開始の申告は、都道府県ごとに期限と様式が違う
個人事業税は都道府県の税金です。税務署への開業届とは別に、都道府県へ事業を始めたことを申告します。東京都主税局は、都内で個人が事業を開始した場合、事業の開始の日から15日以内に「事業開始(廃止)等申告書」を所管の都税事務所等に出すよう案内しています。東京都の申告書は、LoGoフォームを使ってパソコンやスマートフォンから出せます。
期限と様式は都道府県で違います。大阪府は、開業した日から2月以内に、事務所等の所在地を担当する府税事務所へ申告するよう案内しています。
| 東京都 | 大阪府 | |
|---|---|---|
| 書類 | 事業開始(廃止)等申告書 | 事業開始・変更・廃止申告書 |
| 期限 | 事業の開始の日から15日以内 | 開業した日又は事務所若しくは事業所を設けた日から2月以内 |
| 提出先 | 所管の都税事務所等 | 事務所等の所在地を担当する府税事務所 |
ほかの道府県で開業する人は、店の所在地の道府県のページか県税事務所で、期限と様式を確かめてください。
個人事業税は、地方税法などで定めた業種(法定業種)の事業にかかります。東京都主税局の案内では、第1種事業に「飲食店業」「料理店業」などが入っています。毎年の申告は、所得税の確定申告をした人は別に出す必要がなく、確定申告書の「事業税に関する事項」欄に必要事項を書きます。自分の店がどの業種にあたるかは、都税事務所などで確認してください。
個人で開業した年とその翌年は、原則として消費税の免税事業者になる
国税庁は、個人で事業を始めたときの手続きの案内で、消費税について次のように書いています。
消費税について、新規開業年とその翌年は、原則として免税事業者となります。
国税庁 パンフレット「暮らしの税情報」(令和8年度版)「個人で事業を始めたとき/法人を設立したとき」
個人事業者が消費税を納める義務があるかは、前々年(基準期間)の課税売上高で判定します。基準期間の課税売上高が1,000万円以下なら、原則として納税義務が免除されます(消費税法第9条第1項、第2条第1項第14号)。新しく開業した人には前々年の売上がないため、原則として免除になります。
国税庁は、基準期間の課税売上高が1,000万円以下でも課税事業者になる場合を挙げています(タックスアンサーNo.6501・No.6531)。1つは、特定期間(個人事業者は前年の1月1日から6月30日まで)の課税売上高が1,000万円を超えた場合です。この判定は、課税売上高の代わりに給与等の支払額の合計で行うこともできます。もう1つは、適格請求書発行事業者(インボイス)の登録を受けている場合で、登録を受けている間は免税事業者になれません。
インボイスの登録をするかどうかは、店ごとの判断になります。登録の前に、税務署か税理士に相談してください。開業した年から登録を受けたい人は、開業した年の12月31日までに登録申請書を出すと国税庁は案内しています。料金表の税込表示は料金表、税込だけで大丈夫?で扱っています。
法人で開業する場合は、設立から2か月以内に法人設立届出書を出す
株式会社などの法人で店を始める場合は、税務署に法人設立届出書を出します。期限は設立の日(設立登記の日)以後2か月以内で、定款などの写しを添えます(国税庁タックスアンサーNo.5100)。役員や従業員に給与を払う場合の給与支払事務所等の開設届出書は、法人でも1か月以内です(国税庁「暮らしの税情報」)。
法人の青色申告の承認申請の期限は、設立の日以後3か月を経過した日と第1期の事業年度終了の日のどちらか早い日の前日までです(タックスアンサーNo.5100)。個人とは期限の数え方が違います。個人と法人のどちらで始めるか迷っている段階なら、税理士に相談してから決めてください。
今日できる確認
- 開業した日を確かめ、開業届の期限(開業した年分の確定申告の期限)を予定表に入れたか
- 青色申告にするなら、開業の日から2か月以内に青色申告承認申請書を出したか(1月15日までの開業なら3月15日まで)
- 家族に給与を払うなら、青色事業専従者給与に関する届出書を同じ期限で出したか
- 人を雇ったなら、店の所在地の税務署に給与支払事務所等の開設届出書を1か月以内に出したか。10人未満なら納期の特例を申請するか決めたか
- 店のある都道府県で、事業開始の申告の期限と様式を確かめたか(東京都は15日以内)
出典
- 所得税法(e-Gov法令検索。第15条・第16条が納税地、第57条が青色事業専従者給与、第120条が確定申告の期限、第143条・第144条が青色申告と承認の申請、第148条が帳簿書類、第216条・第217条が納期の特例、第229条が開業等の届出、第230条が給与支払事務所等の開設の届出。第229条・第230条の改正前の文言は同サイトの改正履歴で確認)
- 消費税法(e-Gov法令検索。第2条第1項第14号が基準期間、第9条が小規模事業者の納税義務の免除)
- 租税特別措置法(e-Gov法令検索。第25条の2が青色申告特別控除。2027年1月1日施行の改正あり)
- 国税庁 タックスアンサーNo.2090「新たに事業を始めたときの届出など」(個人が事業を始めたときの届出書と提出期限の一覧)
- 国税庁「A1-5 個人事業の開業届出・廃業届出等手続」(開業届の提出時期、提出方法、提出先)
- 国税庁「A1-8 所得税の青色申告承認申請手続」(青色申告承認申請書の提出時期)
- 国税庁「A1-10 青色事業専従者給与に関する届出手続」(専従者給与の届出の提出時期)
- 国税庁「A2-7 給与支払事務所等の開設・移転・廃止の届出」(提出時期と提出先)
- 国税庁「A2-8 源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請」(特例の対象者と納付期限、提出時期)
- 国税庁 タックスアンサーNo.2070「青色申告制度」(青色申告の特典、帳簿の保存期間)
- 国税庁 タックスアンサーNo.2075「青色事業専従者給与と事業専従者控除」(専従者の要件、白色申告の事業専従者控除)
- 国税庁 タックスアンサーNo.2505「源泉所得税及び復興特別所得税の納付期限と納期の特例」(原則の納付期限、特例の対象と適用の始まり)
- 国税庁 タックスアンサーNo.6501「納税義務の免除」・No.6531「新規開業又は法人の新規設立のとき」(基準期間と特定期間、インボイス登録と免除の関係)
- 国税庁 パンフレット「暮らしの税情報」(令和8年度版)「個人で事業を始めたとき/法人を設立したとき」(個人と法人の届出の一覧、消費税の免税の原則)
- 国税庁 タックスアンサーNo.5100「新設法人の届出書類」(法人設立届出書と法人の青色申告の期限)
- 東京都主税局「個人事業税」(事業開始(廃止)等申告書の期限と提出先、法定業種、毎年の申告)
- 大阪府「個人の事業開始等の申告[開業、変更、廃止]」(大阪府の申告期限と提出先)
※2026年10月10日に上記資料を確認しました。青色申告やインボイスの登録をするか、家族に払う給与の額、業務委託で働くキャストへの支払いの扱いは税務署か税理士へ、個人事業税の申告の期限と様式は店の所在地の都道府県税事務所へ確認してください。






