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キャストやアルバイトにも有給休暇はある。日数の計算から、年5日の取得義務と管理簿まで

「アルバイトだから有給はない」「週2日のキャストには関係ない」。どちらも、雇用契約で働く人については通りません。有給休暇は、週1日の勤務でも条件を満たせば発生します。この記事では、日数の決まり方、店に課されている年5日の義務、記録の残し方を条文で確認します。

編集部(水商売経営学)公開 2026年9月24日13分で読めます
開店前の店内のテーブルで、卓上カレンダーに付箋を貼る手元

この記事の要点

  • 雇用契約で働く人は、雇われた日から6か月続けて勤務し、全労働日の8割以上出勤すれば有給休暇が発生する(労働基準法第39条第1項)。アルバイトやパートでも同じ
  • 週の所定労働時間が30時間未満で、週4日以下(年216日以下)の人は、勤務日数に応じた比例付与になる。6か月の時点で週1日なら1日、週2日なら3日、週3日なら5日、週4日なら7日
  • 年10日以上の有給休暇を与える人には、基準日から1年以内に5日を取らせる義務がある(同条第7項)。時季・日数・基準日を書いた年次有給休暇管理簿を作り、当分の間3年間保存する

キャストやアルバイトから「有給って使えますか」と聞かれて、答えに詰まる店があります。週に2日や3日しか入らない人には関係ない、と考えている店もあるはずです。

雇用契約で働いている人なら、週1日の勤務でも、条件を満たせば有給休暇は発生します。この記事では、日数の決まり方、休む日の決め方、年5日の義務、管理簿と賃金、時効までを、労働基準法と厚生労働省の資料で確認します。

雇用契約であれば、キャストやアルバイトにも有給休暇が発生する

有給休暇(年次有給休暇)は、労働基準法第39条が定めています。発生の条件は、この条文の第1項にあります。

使用者は、その雇入れの日から起算して六箇月間継続勤務し全労働日の八割以上出勤した労働者に対して、継続し、又は分割した十労働日の有給休暇を与えなければならない。

労働基準法 第39条第1項

条件は2つです。雇われた日から6か月続けて勤務していること。その間の全労働日の8割以上に出勤していることです。正社員かアルバイトかという区分は、条件に入っていません。

パートやアルバイトという呼び方で、有給休暇がなくなることはありません。 厚生労働省のリーフレットも、正社員やパートタイム労働者などの区分なく、要件を満たした全ての労働者に与えなければならないとしています。

出勤率を数えるときは、有給休暇を取った日も出勤した日として扱います(厚生労働省「確かめよう労働条件」)。業務上のけがや病気で休んだ期間、育児休業・介護休業の期間、産前産後の休業期間も、出勤したものとみなされます(同条第10項)。当日欠勤の数が出勤率に効くので、欠勤は日付と理由を残しておきます。記録の仕方は当日欠勤と遅刻の記録にまとめました。

業務委託の契約で働くキャストには、原則としてこの話は当てはまりません。有給休暇は、労働基準法上の「労働者」に与えるものだからです(同法第9条)。ただし厚生労働省は、労働者にあたるかを、契約の形式や名称にかかわらず判断するとしています。仕事の依頼を断れるか、指揮監督を受けているか、時間や場所の拘束があるかといった実態で見ます。契約と実態が合っているかは、社会保険労務士に確認してください。

週5日または週30時間以上働く人の日数は、最初10日・最大20日

週5日以上、または週30時間以上働く人の日数は次のとおりです。6か月の時点で10日、その後1年ごとに増え、6年6か月以上で20日になります(同条第1項・第2項)。

雇われた日からの勤続期間付与日数
6か月10日
1年6か月11日
2年6か月12日
3年6か月14日
4年6か月16日
5年6か月18日
6年6か月以上20日

2回目以降も、直前の1年間の出勤率が8割未満なら、その年は与えなくてよいとされています(同条第2項ただし書)。有給休暇を与える日(基準日)は、人ごとに違います。入店した日から6か月後が最初の基準日で、そこから1年ごとです。

週1日から4日勤務のキャストには、有給休暇が何日付与されるか

週の所定労働日数が少ない人は、日数が勤務日数に比例して少なくなります(同条第3項)。対象は、週の所定労働時間が30時間未満で、週の所定労働日数が4日以下の人です。週ではなく年単位で勤務日数を決めている人は、年216日以下が対象になります(施行規則第24条の3)。

週の所定労働日数1年間の所定労働日数6か月1年6か月2年6か月3年6か月4年6か月5年6か月6年6か月以上
4日169日〜216日7日8日9日10日12日13日15日
3日121日〜168日5日6日6日8日9日10日11日
2日73日〜120日3日4日4日5日6日6日7日
1日48日〜72日1日2日2日2日3日3日3日

週4日でも、1日8時間の契約なら週32時間です。週30時間以上なので比例付与にはならず、前の見出しの10日からの表を使います。比例付与にあたるかは、日数と時間の両方で見ます。

シフト制で、週ごとの出勤日数が決まっていない人もいます。その場合にどの行を使うかは、契約の内容で変わります。労働基準監督署か社会保険労務士に確認してください。シフトの集め方と、先に決めておくルールはシフトを集める・催促する・配る手順にまとめました。

取得日は本人の指定が原則で、店が変えられるのは例外に限られる

有給休暇は、本人が請求した時季に与えるのが原則です(同条第5項)。店が別の日に変えられるのは、請求された日に休ませると事業の正常な運営を妨げる場合に限られます。これを時季変更権といいます。

時季変更権の行使が認められるのは、例えば同じ日に多くの労働者が同時に休暇指定した場合などが考えられます。単に「業務多忙だから」という理由では、時季変更権は認められません。

厚生労働省「リーフレットシリーズ労基法39条」

週末やイベントの日に、休みの希望が出ることもあります。忙しい日だからという理由だけで一律に断る運用は、この説明に照らすと通りにくいと考えておくべきです。自分の店の事情で変更が認められるかは、労働基準監督署か社会保険労務士に確認してください。

請求された時季に与えなかった場合は、第39条の違反として、6月以下の拘禁刑か30万円以下の罰金の対象になります(同法第119条第1号)。

労使協定を結べば、年5日以内に限って時間単位で与えることもできます(同条第4項)。5日を超える部分については、労使協定で取る日をあらかじめ決めておく計画的付与もあります(同条第6項)。

年10日以上付与される人には、年5日を必ず取得させる

2019年4月から、年10日以上の有給休暇を与える人については、そのうち5日を、基準日から1年以内に店が時季を決めて取らせることが義務になりました(同条第7項)。本人が自分で請求して取った日と、計画的付与で取った日は、この5日から差し引けます(同条第8項)。本人がすでに5日取っていれば、店が時季を指定する必要はありません。

店が時季を指定するときは、あらかじめ本人の意見を聴きます。聴いた意見は、尊重するよう努めなければなりません(施行規則第24条の6)。厚生労働省の解説は、時季を指定しただけでは足りず、実際に5日を取っていなければ法違反として扱うとしています。

週に数日だけの人も、表の日数が10日以上になれば対象です。比例付与の表では、週4日の人は3年6か月から、週3日の人は5年6か月からがこれにあたります。前年度から繰り越した日数は含めず、その年に与える日数が10日以上かで判断します(厚生労働省の解説Q&A)。

この義務に違反すると、30万円以下の罰金です(同法第120条第1号)。厚生労働省の解説は、対象となる労働者1人につき1罪として扱うとしています。違反行為をしたのが店長などの従業者でも、事業主にも罰金が科されることがあります(同法第121条)。

常時10人以上の労働者を使う店は、就業規則を作って届け出る義務があり、休暇はその記載事項です(同法第89条第1号)。厚生労働省は、店が時季指定をするなら、対象になる人の範囲と指定の方法を就業規則に書く必要があるとしています。

年次有給休暇管理簿に記録する3つの項目と保存期間

有給休暇を与えたら、店は人ごとに年次有給休暇管理簿を作ります(施行規則第24条の7)。書くのは次の3つです。

項目書くこと
基準日有給休暇を与えた日。入店から6か月後、以後1年ごと
日数基準日から1年以内に取った日数
時季有給休暇を取った日付

管理簿は、有給休暇を与えた期間中と、その期間が終わってから当分の間3年間保存します(施行規則第24条の7、附則第71条)。労働者名簿や賃金台帳と合わせて作ってもかまいません(施行規則第55条の2)。厚生労働省は、必要なときにいつでも出力できるなら、システムで管理してもよいとしています。

手書きの表で回すなら、シフト表と同じ場所に基準日と残りの日数を書いておくと、5日に届いていない人に早く気づけます。シフトや勤怠と一緒に、有給休暇の基準日と残日数を数えてくれる勤怠ツールもあります。

有休を取った日の賃金の計算方法と、皆勤手当の減額の禁止

有給休暇の日に払う賃金は、平均賃金か、所定労働時間働いた場合に払う通常の賃金のどちらかです(同条第9項)。労使協定を結べば、健康保険の標準報酬月額の30分の1にあたる額にもできます。厚生労働省は、どれを使うかを就業規則などに明確に決めておく必要があるとしています。

時給で働く人の通常の賃金は、時給にその日の所定労働時間数を掛けた額です(施行規則第25条第1項第1号)。時給1,500円で、その日の所定労働時間が5時間なら、7,500円になります。

出来高払制などで決まる賃金は、賃金算定期間の総額を総労働時間数で割り、1日平均の所定労働時間数を掛けて計算します(同項第6号)。時給と歩合のように2つ以上でできている賃金は、それぞれの計算額を足します(同項第7号)。指名やドリンクの歩合がこれにあたるかを含めて、計算の仕方は社会保険労務士に確認してください。深夜の割増の考え方は深夜手当の記事にまとめています。

有給休暇を取った人を、給料や評価で不利に扱うことも禁止されています。

使用者は、第三十九条第一項から第四項までの規定による有給休暇を取得した労働者に対して、賃金の減額その他不利益な取扱いをしないようにしなければならない。

労働基準法 附則第136条

厚生労働省の解説は、精皆勤手当や賞与の額の計算で、有給休暇を取った日を欠勤や欠勤に準じて扱うことを、不利益な取扱いの例に挙げています。皆勤手当を出している店は、計算の仕方を見直しておきます。

時効は2年。退職の直前にまとめて使いたいと言われたら

有給休暇の請求権は、2年で時効により消滅します(同法第115条)。厚生労働省は、前年度に取らなかった分は翌年度に与える必要があるとしています。2020年4月に賃金の請求権の時効は5年(当分の間3年)に延びましたが、有給休暇の請求権は2年のままです。

第115条は2027年4月1日から改正されます。災害補償の請求権の規定を分ける改正で、賃金以外の請求権を2年とする部分は残ります。

キャストやスタッフが辞める前に、残りの有給休暇をまとめて使いたいと言うことがあります。厚生労働省の「確かめよう労働条件」は、退職日で有給休暇の権利は消えるため、店は時季変更権を使えず、取得を認めるほかないとしています。引き継ぎのために退職日をずらしてもらえないか打診することはできますが、応じるかは本人が決めます。

今日できる確認

  • 雇用契約で働く人ごとに、入店日と、6か月後の最初の基準日を書き出したか
  • 週の所定労働日数と所定労働時間から、比例付与の表のどこにあたるかを確かめたか
  • 年10日以上になる人に、基準日から1年以内に5日を取らせる段取りがあるか
  • 年次有給休暇管理簿に、基準日・日数・時季を1人ずつ書いているか
  • 有給休暇を取った日を、皆勤手当の計算で欠勤として扱っていないか

出典

※2026年9月24日に上記資料を確認しました。自分の店の人が比例付与のどの区分にあたるか、歩合を含む賃金の計算、業務委託の人が労働者にあたるかは、労働基準監督署か社会保険労務士へ確認してください。

編集部(水商売経営学)

水商売経営学の編集部です。実際に店を回してきた人間と、業界の外から入った編集者で書いています。法律・税務の記事は公的資料を出典として明示します。制度の説明は出典を示して公開し、許可・届出の要否や条文の解釈など「うちの店の場合はどうか」に踏み込む記事は、行政書士・税理士の確認が取れるまで公開しません。取材した店の話は、聞いた範囲のことだけを書きます。個別の判断は店の状況によって変わるため、迷う表現は確認したうえで進めてください。

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