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キャバクラやスナックの防火管理者と消防の届出。何人から必要か、提出期限、ビルの注意点

小さな店を借りただけでも、消防署から防火管理者の選任を求められることがあります。防火管理者が要るかどうかは、店の広さではなく、入っている建物全体の人数で決まることがあるからです。この記事では、防火管理者の要否、開店前に消防署へ出す届出、テナントビルで気をつけることを、消防法令と東京消防庁の資料で確認します。

編集部(水商売経営学)公開 2026年9月24日13分で読めます
宵の店の廊下で、壁に掛けた消火器の横に立ち、クリップボードに点検の記録を書き込む手元

この記事の要点

  • 飲食店やキャバレーなど不特定の人が出入りする用途を含む建物で、建物全体の収容人員が30人以上なら、建物の所有者とすべてのテナントがそれぞれ防火管理者を選任し、消防署に届け出る(消防法第8条、施行令第1条の2)
  • 資格は講習で取る。延べ面積300㎡以上の建物なら甲種、300㎡未満なら乙種でもよい。甲種が要る建物でも、自分の店の部分だけで収容人員30人未満なら乙種で足りる
  • 東京都では、店を使い始める日の7日前までに防火対象物使用開始届を出す(火災予防条例第56条の2)。内装工事をするなら、着手の7日前までに工事等計画届も要る

物件を決めて、内装の打ち合わせを始めた頃に、消防署の名前が出てきます。「防火管理者は誰にしますか」「使用開始の届出は出しましたか」。保健所や警察の手続きと並行して進むため、期限を知らないまま進めると、開店日の直前に慌てることになります。

この記事では、防火管理者が要る条件、資格の取り方、開店前に消防署へ出す届出、店に置く消防用設備、テナントビルで気をつけることを、消防法・消防法施行令・施行規則と東京消防庁の資料で確認します。届出の期限は、東京都の火災予防条例をもとに書いています。

建物全体で30人以上なら、小さな店でも防火管理者の選任が必要になる

消防法第8条第1項は、多数の人が出入りする建物の管理について権原を持つ人に、防火管理者を定めて、消防計画の作成や避難訓練などをさせるよう求めています。対象の建物は、施行令第1条の2第3項が決めています。

飲食店、キャバレー、百貨店などの用途を含む建物は、収容人員が30人以上で対象になります。事務所や共同住宅など、それ以外の用途だけの建物は50人以上です。

防火管理者が必要な建物では、建物所有者及びすべてのテナントで防火管理者の選任が必要です。

東京消防庁「防火管理者が必要な防火対象物と資格」

収容人員は店ごとではなく、建物全体で数えます。 東京消防庁の審査基準も、消防法第8条の適用では収容人員を棟単位で算定するとしています。席の少ないスナックでも、飲食店がいくつも入ったビルの一室なら、自分の店に防火管理者を置くことになりえます。入居するビルが対象かどうかは、物件を決める前に管轄の消防署に確認してください。借りる前に契約書で確かめる点は店の物件の賃貸借契約にまとめています。

収容人員はどう数えるか。従業者の数と客席の面積による計算方法

収容人員の算定方法は、施行規則第1条の3が用途ごとに定めています。キャバレーや飲食店(遊技場を除く)は、次の3つを足した数です。

  • 従業者の数
  • 固定式のいす席の数(長いすは、正面の幅を0.5mで割った数)
  • 客席のうち、それ以外の部分の床面積を3㎡で割った数

たとえば、固定式のいす席がなく、客席の床面積が45㎡で、従業者が6人なら、45÷3=15に6を足して21人です。同じビルに入るほかの店や、ビル全体の分も合わせて、建物全体の人数が決まります。

出勤するキャストの人数をどう数えるか、カウンター席を固定式のいす席とみるかといった細かな扱いは、図面を持って消防署で確認してください。

キャバクラとスナックで分かれることがある、消防法令の用途区分

消防法令は、建物の使い方を施行令の別表第一で区分しています。キャバレー、カフェー、ナイトクラブその他これらに類するものは(2)項イ、飲食店は(3)項ロです。複数の用途が入るビルで、その一部に店舗などが入っていれば、(16)項イの複合用途防火対象物になります。

水商売の店がどちらに入るかは、条文には書かれていません。東京消防庁の審査基準は、(2)項イの例にクラブ、バー、サロン、ホストクラブ、キャバクラを挙げています。(3)項ロの飲食店は「客の遊興又は接待を伴わないもの」とし、例にスナックやスタンドバーを挙げています。

客を接待することとは、客席において接待を行うもので、カウンター越しに接待を行うことは含まないものであること。

東京消防庁「予防事務審査・検査基準」第2章第1節第3 政令別表第1に掲げる防火対象物の取扱い((2)項イの補足事項)

消防の用途区分は、風営法の許可が要るかどうかとは別の物差しです。区分が変わると、下で見る消火器の設置基準などが変わります。自分の店がどちらに当たるかは、営業の仕方を説明して消防署で確かめてください。風営法側の手続きはスナック開業の許可一覧、ラウンジ開業の許可一覧、ガールズバー開業の許可一覧にまとめています。

甲種と乙種の違いと、受けるべき防火管理講習

防火管理者になれるのは、防火管理講習を修了した人などで、しかも店の防火管理の業務をきちんとこなせる「管理的又は監督的な地位」にある人です(施行令第3条第1項)。店の場合は、オーナーや店長のように店を管理する立場の人が候補になります。

資格には甲種と乙種があり、建物の延べ面積で分かれます。

建物と店の条件(飲食店・キャバレー等を含む建物)必要な資格根拠
建物全体の収容人員30人以上、延べ面積300㎡以上甲種施行令第3条第1項第1号
建物全体の収容人員30人以上、延べ面積300㎡未満甲種または乙種施行令第3条第1項第2号
甲種が必要な建物で、管理の権原が分かれており、自分の店の部分だけで数えた収容人員が30人未満甲種または乙種施行令第3条第3項、施行規則第2条の2の2

東京消防庁の案内では、甲種は2日間、乙種は1日の講習で資格が取れます。東京消防庁の甲種の新規講習は、防災管理とあわせた「防火・防災管理新規講習」として行われ、2日間の対面講習のほか、オンライン講習と1日の実技講習を組み合わせる受け方もあります。東京消防庁の講習は、都内(稲城市を除く)の建物や事業所で防火管理者に選任される人だけが申請できます。開店日から逆算して、早めに日程を押さえておきます。

開店前に消防署へ出す主な届出と期限

防火管理者を定めたら、遅滞なく所轄の消防長か消防署長に届け出ます(消防法第8条第2項)。解任したときも同じです。届出書には、講習の修了証など資格を証する書面を添えます(施行規則第3条の2)。防火管理者は、消防計画を作って届け出ます(施行令第3条の2第1項)。

東京都では、これに加えて火災予防条例の届出があります。

令別表第一各項に掲げる防火対象物又はその部分を使用(一時使用を除く。以下この条において同じ。)しようとする者(前条第一項各号(新築を除く。)に掲げる行為をしたのち使用しようとする者を含む。)は、当該防火対象物又はその部分の使用を開始する日の七日前までに、規則で定めるところによりその旨を消防署長に届け出なければならない。

東京都 火災予防条例 第56条の2第1項

東京消防庁は、工事をしなくても、建物やその一部を新たに使うなら届出が必要だと案内しています。工事をせずに、前の店の設備のまま使い方を変える場合も、届出が必要な例に挙げています。

届出いつまでに根拠
防火対象物工事等計画届出書(内装工事・間仕切りの変更など)工事に着手する日の7日前まで東京都火災予防条例第56条
防火対象物使用開始届出書使用を開始する日の7日前まで東京都火災予防条例第56条の2
防火管理者選任届出書選任したら遅滞なく消防法第8条第2項
消防計画作成届出書作成したとき・変更するとき施行令第3条の2、施行規則第3条
消防用設備等の設置届(延べ面積300㎡以上の建物などで設備を設置したとき)工事が完了した日から4日以内消防法第17条の3の2、施行令第35条、施行規則第31条の3

消火器の設置が必要な建物など、条例が「指定防火対象物等」と定める建物を使う人は、使用開始前に消防署長の検査を受けます(火災予防条例第56条の2第3項)。使用開始届を出さずに、または検査を拒んで建物を使うと、10万円以下の罰金です(同条例第67条の2第4号)。東京都以外では、期限や様式が市町村の条例で決まります。管轄の消防署に確認してください。

店内に必要な消防用設備と、カーテンなどの防炎性能

消防用設備等は、消防法第17条第1項により、建物の関係者が施行令の基準どおりに設置し、維持しなければなりません。飲食店に関係の深い3つは次のとおりです。

設備(2)項イ(キャバレー等)(3)項(飲食店など)根拠
消火器延べ面積にかかわらず必要火を使う設備や器具があれば延べ面積にかかわらず必要(防火上有効な措置をしたものを除く)。なければ延べ面積150㎡以上施行令第10条第1項
自動火災報知設備延べ面積300㎡以上。地階・無窓階は床面積100㎡以上同左施行令第21条第1項第3号・第10号
誘導灯(避難口・通路)必要(避難が容易と認められる一定の場合を除く)同左施行令第26条第1項

テナントビルでは、自動火災報知設備の延べ面積300㎡の基準などは、店の面積ではなく建物全体で判断します(施行令第9条)。また、地階か3階以上に店があり、地上へまっすぐ出られる階段が1つしかない建物は、面積にかかわらず自動火災報知設備が必要です(施行令第21条第1項第7号。屋外階段など一定の構造なら階段1つでよい)。

カーテンや布製のブラインド、じゅうたんなども見落としやすい点です。キャバレーや飲食店は防炎防火対象物にあたり、そこで使うカーテン、布製のブラインド、暗幕、じゅうたん等は、基準以上の防炎性能を持つものでなければなりません(消防法第8条の3第1項、施行令第4条の3)。雑居ビルに入る店も、その部分が同じ扱いになります。内装で布を多く使う店は、発注の段階で防炎物品を指定しておきます。

テナントビルに入居したら、ビル全体の防火管理体制にも加わる

管理の権原が分かれている建物のうち、施行令第3条の3の条件に当たるものは、統括防火管理者を置きます。飲食店やキャバレーが入るビルなら、地階を除く階数が3以上で、収容人員が30人以上の建物です。統括防火管理者は、管理の権原を持つ人たちが協議して定めます(消防法第8条の2第1項)。

各テナントの消防計画は、ビル全体の消防計画に合わせて作ります(同条第3項)。統括防火管理者は、必要なときに各テナントの防火管理者へ指示ができます(同条第2項)。入居時には、ビル側の統括防火管理者が誰か、全体の消防訓練がいつかを管理会社に確認しておきます。

階段が1つしかない雑居ビルは、ほかにも義務が増えます。地階か3階以上に店がある場合、消防用設備等の点検は消防設備士などの有資格者にさせます(施行令第36条第2項第3号)。防火管理者が必要な建物なら、防火対象物点検資格者による点検と報告も年1回あります(消防法第8条の2の2、施行令第4条の2の2、施行規則第4条の2の4)。

開店後も続く消火・避難訓練の実施と、定期的な点検報告

届出を出して終わりではありません。消防計画に沿った業務が毎年続きます。

  • 消火訓練と避難訓練を年2回以上行う。行うときは、あらかじめ消防機関に通報する(施行規則第3条第10項・第11項)
  • 消防用設備等を、1年以内で消防庁長官が定める期間ごとに点検し、結果を1年に1回、消防署に報告する(消防法第17条の3の3、施行規則第31条の6)
  • 防火管理者が辞めたら、解任の届出と、新しい人の選任の届出を出す(消防法第8条第2項)

防火管理者の選任届を怠ったときや、設備の点検結果を報告しなかったときは、30万円以下の罰金または拘留です(消防法第44条第8号・第11号)。消防署から防火管理者を定めるよう命じられて従わなければ、6月以下の拘禁刑または50万円以下の罰金です(同法第42条第1項第1号)。訓練や点検の記録は、日付と内容が分かる形で店に残しておきます。風営法による警察の立入で見られる記録は、警察の立入で何を見られるのかにまとめています。

今日できる確認

  • 入居している(入居予定の)ビル全体の収容人員が30人以上か、管理会社か消防署に確認したか
  • 防火管理者を誰にするか決め、甲種・乙種のどちらの講習が要るかを確かめたか
  • 使用開始の7日前、内装工事の着手の7日前という届出の期限を、開店日から逆算して予定に入れたか
  • 消火器、誘導灯、自動火災報知設備の要否と、カーテンやじゅうたんの防炎表示を確かめたか
  • ビルの統括防火管理者と、全体の消防訓練の予定を管理会社に聞いたか

出典

  • 消防法(e-Gov法令検索。第8条が防火管理者、第8条の2が統括防火管理者、第8条の2の2が防火対象物の定期点検、第8条の3が防炎、第17条が消防用設備等の設置・維持、第17条の3の2が設置の届出と検査、第17条の3の3が点検と報告、第42条・第44条が罰則)
  • 消防法施行令(e-Gov法令検索。第1条の2が防火管理者を定める防火対象物、第3条が甲種・乙種の資格、第3条の3が統括防火管理者を定める防火対象物、第4条の3が防炎防火対象物と防炎物品、第9条が複合用途の扱い、第10条が消火器具、第21条が自動火災報知設備、第26条が誘導灯、第35条・第36条が設置届と点検資格者、別表第一が用途区分)
  • 消防法施行規則(e-Gov法令検索。第1条の3が収容人員の算定方法、第2条の2の2が乙種で足りる部分、第3条が消防計画と訓練、第3条の2が選任届、第31条の3が設置届の期限、第31条の6が点検と報告の期間)
  • 東京都 火災予防条例(東京都例規集。第56条が工事等計画の届出、第56条の2が使用開始の届出と検査、第67条の2が罰則)
  • 東京消防庁「新たにテナントを使用する皆様へ」(使用開始届と工事等計画届の期限、必要書類)
  • 東京消防庁「防火対象物の使用開始の届出をしよう」(工事をしない場合や居抜きでの用途変更でも届出が必要な例)
  • 東京消防庁「防火管理者が必要な防火対象物と資格」(すべてのテナントでの選任、甲種2日間・乙種1日の講習)
  • 東京消防庁「防火管理講習・防災管理講習」(講習の申請条件と受講形式)
  • 東京消防庁「予防事務審査基準」(第2章第1節第3が別表第一の用途区分の例と接待の扱い、第7が収容人員を棟単位で算定すること)

※2026年9月24日に上記資料を確認しました。自分の店の用途区分、防火管理者の要否、必要な消防用設備、届出の期限は、図面と営業の内容を持って、店の所在地を管轄する消防署へ確認してください。

編集部(水商売経営学)

水商売経営学の編集部です。実際に店を回してきた人間と、業界の外から入った編集者で書いています。法律・税務の記事は公的資料を出典として明示します。制度の説明は出典を示して公開し、許可・届出の要否や条文の解釈など「うちの店の場合はどうか」に踏み込む記事は、行政書士・税理士の確認が取れるまで公開しません。取材した店の話は、聞いた範囲のことだけを書きます。個別の判断は店の状況によって変わるため、迷う表現は確認したうえで進めてください。

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