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風営法の許可を取っている店が使えない補助金

システムを入れたいが補助金が使えるか分からない、という話をよく聞きます。IT導入補助金は風営法の営業を明確に外していて、外し方が条文の項番号で決まっています。自分の店がどちら側かは、手元の許可証と届出書を見れば確かめられます。

編集部(水商売経営学)公開 2026年8月9日7分で読めます
宵の店の事務スペースで書類と電卓を確認する手元

「レジやシフト管理のシステムを入れたい。補助金が使えると聞いたが、うちは風営法の許可を取っている。対象になるのか」

この質問には、公募要領を開けば答えが書いてあります。ただし書いてある場所が、条文の項番号を指しているだけの一文なので、読んでも自分の店が当たるのか分かりにくい。順番に確かめます。

除外されているのは「第2条各項に規定する営業を営む事業者」

デジタル化・AI導入補助金2026(旧・IT導入補助金)の公募要領は、補助対象外となる事業者をこう書いています。

風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律第2条各項に規定する営業を営む事業者(風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律第2条1項1号に規定する営業を営む事業者のうち、旅館業法第3条第1項に規定する許可を受け旅館業を営むものを除く。)

デジタル化・AI導入補助金2026 公募要領(通常枠)

読むべきところは2つです。

ひとつは、外されているのが「営む事業者」だということ。風営法の営業をしている店そのものが対象外という意味で、そういう店を相手に商売をしている業者のことではありません。

もうひとつは、「第2条各項」という指定のしかたです。風営法のどの条文に自分の店が書かれているかで、結論が変わります。

自分の店がどちら側かは、手元の書類で分かる

許可関係の書類と補助金の申請画面を照合する手元
手元の許可証・届出書と、公募要領の対象外条件を照らし合わせる

風営法の第2条には、いくつもの営業が定義されています。店に関係するのは主にこの3つです。

条文営業の種類手元にある書類
第2条第1項第1号接待をして飲食させる営業(キャバクラ・スナック・ホストクラブなど)風俗営業許可証
第2条第11項特定遊興飲食店営業(深夜に客に遊興をさせ、酒類を提供する営業)特定遊興飲食店営業許可証
第2条第13項接客業務受託営業(他店の営業所で接客業務の一部を受託する営業)

いずれも第2条に定義がある営業なので、先ほどの文言に当たります。許可証が手元にあるなら、その時点でIT導入補助金の対象外です。

深夜酒類提供飲食店営業は、第2条に出てこない

ここが分かれ目です。

午前0時を過ぎて酒類を提供する店が公安委員会に出している届出は、風営法第33条(見出しは「深夜における酒類提供飲食店営業の届出等」)にもとづくものです。第2条には、この営業の定義がありません。

接待をしていないガールズバーやコンカフェは、風俗営業の許可ではなくこの届出だけで営業しています。つまり、同じ「夜の店」でも、条文上の位置が違います。

自己判断で申請しないでください

第2条に定義がないという事実と、補助金の対象になるかどうかは別の話です。最終的に判断するのは補助金事務局で、店の実態を見て判断されます。接待をしているかどうかの線引きも、店側の認識と警察の見方がずれることがあります。申請を考えているなら、公募要領の問い合わせ先に自分の店の営業区分を伝えて確認してください。

自分の店がどちらか分からない場合は、まず手元の書類を見てください。風俗営業許可を取っているのか、深夜酒類提供飲食店営業の届出だけなのか。これは店を開けるときに必ずどちらかを出しているので、控えが残っています。どちらを出すことになるかは開業で必要な手続きの一覧で、届出の手順は深夜酒類提供飲食店営業の届出で確認できます。

補助金ごとに、書き方が違う

風営法の営業をひとくくりに外している補助金ばかりではありません。

小規模事業者持続化補助金の公募要領は、補助対象外となる事業をこう書いています。

事業内容が射幸心をそそるおそれがあること、または公の秩序もしくは善良の風俗を害することとなるおそれがあるもの、公的な支援を行うことが適当でないと認められるもの 例)マージャン店・パチンコ店・ゲームセンター店等、性風俗関連特殊営業等

小規模事業者持続化補助金<一般型 通常枠> 第19回公募 公募要領

条文の項番号ではなく、事業内容で判断する書き方です。例示に挙がっているのも性風俗関連特殊営業などで、接待飲食の営業は名指しされていません。

信用保証協会の扱いも変わりました。2020年5月から、風俗営業に係る飲食業等(バー・キャバレー・ナイトクラブ等)が保証対象業種に加わっています。

同じ「風営法の店」でも、制度ごとに扱いが違います。ひとつの補助金で断られたからといって、他も同じとは限りません。

対象になっても、買えるものは決まっている

もうひとつ、見落としやすい制限があります。

IT導入補助金は、店が自由に選んだシステムを買って申請する仕組みではありません。公募要領はこう定義しています。

ITツールとは、本事業においてIT導入支援事業者が提供し、かつ事務局に登録された中小企業・小規模事業者等の労働生産性の向上に資するソフトウェア(AIを含む。以下同じ。)・オプション・役務・ハードウェアの総称を指す。

デジタル化・AI導入補助金2026 公募要領(通常枠)

つまり、事務局に登録済みのツールしか買えません。入れたいシステムがあっても、そのツールが登録されていなければ、この補助金は使えません。申請も、IT導入支援事業者として登録された事業者と組んで行います。

補助率は通常枠で2分の1以内(一定の条件を満たす場合は3分の2以内)、補助額は5万円からです。月額数千円のツールを1つ入れるだけでは下限に届かないこともあります。

確認する順番

  1. 手元の書類を見る。風俗営業許可証があるか、深夜酒類提供飲食店営業の届出の控えだけか
  2. 応募したい補助金の公募要領で、対象外の項目を読む。制度ごとに書き方が違うので、他の補助金の情報を当てはめない
  3. 事務局に問い合わせる。自分の店の営業区分を伝えて確認する。グレーなまま申請すると、採択後に取り消されることがあります
  4. 入れたいツールが登録されているかを確認する。IT導入補助金の場合、ここが通らないと話が進みません

補助金が使えなかったとしても、業務を楽にする方法がなくなるわけではありません。月額の小さいツールなら、補助金の手続きにかかる手間と時間のほうが高くつくこともあります。

この記事の位置づけ

公表されている公募要領と法令の条文をもとにした一般的な説明です。特定の店が補助金の対象になるかどうかを判断するものではありません。実際の可否は補助金事務局が判断します。営業区分や許認可の扱いについて個別の判断が必要なときは、行政書士など有資格者にご相談ください。

出典

この記事の要点

  • IT導入補助金は「風営法第2条各項に規定する営業を営む事業者」を対象外にしている。接待をしている店(風俗営業1号)と、遊興をさせる店(特定遊興飲食店営業)は、この文言に当たる
  • 深夜酒類提供飲食店営業は風営法第33条の届出で、第2条には定義がない。同じ「夜の店」でも条文上の扱いが違うので、自分の店の営業区分を先に確かめる
  • 対象になっても、買えるのは事務局に登録されたITツールだけ。導入したいツールが登録されていなければ、この補助金は使えない
編集部(水商売経営学)

水商売経営学の編集部です。実際に店を回してきた人間と、業界の外から入った編集者で書いています。法律・税務の記事は公的資料を出典として明示します。制度の説明は出典を示して公開し、許可・届出の要否や条文の解釈など「うちの店の場合はどうか」に踏み込む記事は、行政書士・税理士の確認が取れるまで公開しません。取材した店の話は、聞いた範囲のことだけを書きます。個別の判断は店の状況によって変わるため、迷う表現は確認したうえで進めてください。

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